Z系カスタム定番 APレーシング/ロッキードキャリパーの修理方法 ~ブリーダーネジ部分周辺

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憧れの「ロッキード」 キャリパー修理を解説

 

APレーシング/ロッキードキャリパーのネジ山が壊れてしまった時の対処方法

長年使っているとメンテナンス頻度も高くなり、ネジ山が悪くなってしまうもの。
ロッキードはブレンボと違いネジが特殊なサイズです。
リコイルするにもかなり困難で高レベルの修理となります。
ここではリコイル無しで修理可能な方法を解説しています。


 

Z系カスタムの定番キャリパー ~APレーシング・ロッキード

ひと昔前は「ロッキード」、今では「APレーシング」と呼称が変わっています。
キャリパー形状は同じでも、ボディに入る文字は違います。


    【今回修理の物は30年前のロッキードです】
数あるカスタムパーツの中でも、このロッキードは一番最初に付けたいと願った部品です。
今調べてみますと、ヤフオク・メルカリ共に売りに出されている物は僅かです。
中古購入~整備後取り付け・・・、は難しいので、修理確定です。

エア抜き用、ブリーダー部分のネジ山が無くなってしまっています。
30年以上前に装着されてから、幾度となくフルード交換されてきたのでしょう。
滲みを嫌って少しキツメに締め込む回数が多いと、ブリーダーはスチール(鉄)ですのでアルミのキャリパーボディ側がダメージを受けます。

 


 

『3/8』と言う特殊なボルトサイズ

ブレンボは『1mm』ピッチのネジサイズで、ボルト径も『M10』などミリ単位です。
しかしロッキード(APレーシング含む)は『3/8インチ』のボルト径で、
ミリに変換しますと『9.525mm』です。ネジピッチの表記も独特で『24』となっています。
同じ『3/8』でも『16』と言うピッチもあります。
これはネジ山の間隔・長さではなく、1インチ『25.4mm』の中にいくつネジ山があるかと言う表示方法です。

  • 『16』→25.4mm内に16個のネジ山
  • 『24』→25.4mm内に24個のネジ山
ロッキードの場合、正式には『3/8-24』と言うネジサイズです

 


 

ブリーダー部分のネジ山は修理出来るのか? ~リコイルは使えるのか

ネジ山修理の定番、そして強い味方『リコイル』


    【リコイル『3/8』サイズの設定があります】

ロッキードの他、ハーレーでも使える部分があるかもしれません。
但し、基本リコイルは貫通穴・通り穴に使うもので、止り穴への作業は限度・限界があります。
拡大ドリルは底まで届きますが、その後の重要な作業『ネジ切り』。
リコイルのセットには「中仕上げ・中タップ」しか入っていません。
タップのセットを見たことがある方はお分かりになると思いますが、タップは3本セットで
各々『先タップ(1番)』、『中タップ(2番)』、『上げタップ(3番)』となっています。
止り穴の場合、中タップ→上げタップの順で仕上がりますが、このセットにはこの
『上げタップ』はありません。穴を拡大してしまった後で、ネジが切れなかった場合
修理不能となってしまいます。
そこでリコイル上げタップの型番を調べた後、リコイル輸入代理店の池田金属様に
納期と金額を問い合わせてみました。
とても丁寧で親切なご案内のあと、数日後に以下のようなご回答を頂きました。

 

カワサキオート
サービス様

お世話になります。
受注生産のため価格と納期は以下の通りです。

44066 3/8-24  160,000円 納期:8~10週間

以上宜しくお願いします。

44066 3/8-24ですが、弊社・オーストラリアが在庫がないため受注生産になり
ます。

~~~ゼロひとつ違うのかと思い、何度も見返してしまいました(汗)

こうなりますと上げタップまで用意は難しいので、このままネジ山が浅いままいくのか
その他何か良い方法がないものか、アイディアが浮かぶようにブレーキとは無縁の作業をしつつ頭を柔軟にする時間を作りました。

 

   リコイルは様々なネジサイズが用意されています

 


 

リコイルは使わず残ったネジ山で対処する方法

まずは残っているネジ山で何とか解決し、ネジ穴拡大は最終手段としました。

ネジ山が痛むのはネジの入り口で、止まり穴の場合、奥の方は痛んでいません。

試しに「3/8」のバンジョーボルトを締め込んでみると、奥の数山はしっかりしている様子で
これならばボルト固定が出来そうな雰囲気です。

この壊れたネジ部分から、エア抜きが出来れば良いだけだと思った時に閃きました。
今後外すことの無いように「エアフリー・バンジョーボルト」で固定してしまえば良いのでは?
→なにも同じブリーダーを取り付けなくともエアが抜ける構造にすれば良し

そこで、ネジ上の高さが一番低いエアフリー付きのバンジョーボルトを用意しました。
グッドリッジのエアフリー・ステンレスバンジョーボルト。
かなり高価ですが、「3/8」サイズのステンレスはこのグッドリッジのみの設定。
そしてボルト上部の高さも他メーカー品よりも低いので、ブリーダー部分に使用しても
目立ちにくく出来そうな雰囲気があります。
ネジの深さからボルト長とワッシャーの厚みを考えて、スペーサーは「8mm厚」を選定。
→7mmも試してみましたが、ボルトが底付きしてしまいました

 

バンジョーボルトのバフ研磨後に仮組してみました。
完成するとこの様な感じに仕上がります。

 


 

必要な部品と実際の作業方法

今回使用の物は「アクティブ」さんから販売されているものを使いました


    【用意した部品】

①3/8エアフリー・バンジョーボルト
②8mmスペーサー
③M10~1.5mm厚アルミワッシャー

***ボルトはキャリパー他部品に合わせて
バフ仕上げとしています。

***ロッキードの場合キャリパーボディ表面が粗いため、取り付け前の下地処理が必須です。

 


 

キャリパー側・下地処理の方法

ロッキードキャリパーの表面はとても粗いので、そのままだとフルード漏れを起こします

試しに仮組をしてエア抜きまで行うと、
思った通りにワッシャーとボディの隙間からフルードが滲み出てきます。

表面の点々を見れば、この仕上げでは出てきて当然です。


 

 

ボルト穴にティッシュを詰め込んで、オイルストーン(400番)にて水平に気をつけて
表面の凹凸が無くなるまで研磨します。
キャリパーの平滑・面出しが重要になりますので、オイルストーンは新品を使います


 

 

新品は特にそうですがオイルの吸いが大きいので、オイルストーンにはこまめにオイルを塗布してあげます。
オイルを吸ったティッシュも同じ様にこまめに交換します。


 

 

時間はかかりますが、じっくりと丁寧に焦らず削ってようやく凹凸・点々が無くなりました。
既に『地』が出ていますがこれで正解です。


オイルストーンでの粗削りが終わったら、オイルストーンに耐水ペーパーを巻き付けて
600番→800番→1000番 ~の手順で目を細かくして仕上げます。


 

これがブリーダーです。
先端部が経年劣化で腐食すると、ネジを締めてもフルードが滲んできます。
それを嫌って固く増し締めしていくと、やがてこの車両の様にネジが駄目になってしまいます。滲みが収まらない時にはこの部品を新しくして対処するのが正解です。

 

   ネジ山保護の為にも専用グリスは大事です


 

バンジョーボルト組付け~エア抜き

全ての作業に於いて「仮組~下処理」は重要です。
ここまで終われば完成は間近になります。

構想通りに仕上がりました。
奥側に残っていたネジ山にも問題はなく、かなりの高トルクで締め付けてもしっかり固定。
グッドリッジはインチサイズのようで(9/16)、手持ちのレンチでは締め付け不可にて
「プライヤーレンチ」を使用しました。
これがとても便利で1本あるだけで作業の幅が広がります。
キャリパー単体の時点で固定しておくと、ブレーキホースなど周辺部品と干渉せず締め込み過程が楽になります。
そしてここはネジが悪くなっていますので、規定トルクをかけずに手動で加減しながらの締め込みとなります。
下地が整っているので漏れにくいと思いますが、エア抜き後に圧力をかけて確認し
滲むような場合には加減して、少しづつ増し締めしていきます。

250mmサイズ(画像内上)と
180mmサイズ(画像内下)。
2本目に180mmを揃えましたが、このサイズが最高に使い易く250mmの出番は殆ど無くなりました。

ネジ部分にはカジリ防止に「スレッドコンパウンド」を塗布します。


 

 

キャリパーボディ裏側に「ロッキード」の文字が確認できます。
古い部品ですが、リペアキットもピストンも健在ですので、しっかりと整備して末永く使えればと思います。
参考までにキャリパーボディに使われている穴付きボルトはチタン製で、ボルト頭だけでなく
ネジ終わり部分まで平らにしてバフ仕上げとしています。
→キャリパー取付ボルトは穴あき軽量タイプです

 

 

装着されていると分かり辛いのですが、こうしてキャリパー単体にして両手で触れると・・・
なんだかとても温かみのある、そして存在感が大きく伝わってくる製品です。
両手に程よく収まる大きさ・作りで、しばらくこうして大事に持っていられます(笑)
→触り心地が非常に良い!

 

 

   プライヤーレンチは「クニペックス」が精度良くお勧めです