純正キャブレターの不具合を解消・キャブセッティング
FCRキャブレターの方がセットアップは簡単と思えるほど純正キャブレターでの調整は難しいです。これは新品部品が販売終了と言う事もありますが、経年劣化と過去の整備でキャブレター本体が消耗している為です。
40年の間に幾度も洗浄されたキャブレターの末路
同じZ系でもマーク2とZ1000Jを境に材質が変わっています
40年前の素材は当然現在の物よりも品質が劣ります。Z1000Mk2まではアルミ素材は脆く、キャブクリーナーで溶け出す程の劣化具合の物を何度も洗浄されてしまうと燃料通路は拡大、例え新品のジェットを付けても濃い状態になるのは必至です。アクセル開け始めのブスブスや回転の落ち込みを伴うボコボコ感は燃料通路拡大が主だった原因です。
Z1000Jより強制開閉から負圧式になるのと同時に現行車両と同様のアルミ素材に変わりました
パイロットジェット・スロージェットの交換
ジェットを交換して燃料調整
パイロットジェットはZ1初期でこそ「17.5番」が使われますが、Z2含めZ1RからZ1000Mk2までの標準番手は「15番」が使われています。
カワサキ純正品で「12.5番」、「15番」、「17.5番」の設定がありますのでまずはどの車種も標準番手から始めて、まだ濃い状態であればひとつサイズを落として調整する様にします。
ミクニ製・カワサキ純正品は当サイトでも販売があります。
ジェットニードルの調整
パイロットジェットの交換と同時進行でジェットニードルの調整をします
順序としてはパイロットジェットを標準の番手の新品に交換後、ジェットニードル位置を1段下げます。そしてエアスクリューの調整を行ってから試乗して様子を見ます。この状態でまだ開け始めの症状が改善されないのであれば、今度は逆に1段上げてみて上下どちらが良いのかを判断します。
少しでも良くなっているのであれば更に1段下げての作業を繰り返して一番良い所で落ち着かせます。
【キャブレター・トップキャップの取り外し】
カバーを外すと六角ボルトが確認出来ます(隣の六角ナットは同調調整用のものです)。
この六角ボルトを外すとキャブレターピストンがフリーの状態になります。
【ピストンアームとピストンの分離】
ドライバーを差し込むのに少々コツが必要ですが、ピストンをフリーにする事でアクセス可能となります。
「+」ビスへのダメージを減らす為にもドライバーはメーカー品の新しい物を使います
トップキャップとキャブレターピストンの取り外しの際は、ロングタイプのプラスドライバーがあると作業性が上がります。
【ジェットニードルの取り外し】
ピストンアームをピストンから外すと丸いシムが入っています。その下にジェットニードルは挿し込まれています。
クリップの上下に樹脂ワッシャーが付いていますので無くさない様に注意の事。
上下で厚みも違いますので写真を撮ってメモ代わりにすると良いでしょう。
ジェットニードルの下には小さなスプリングも入っていますので、これも無くさない様に注意しましょう。
【ジェットニードル ~クリップの脱着方法】
あまり知られていないジェットニードルのクリップの脱着。
ラジオペンチ等で脱着する方法が一般的ですが、これですとニードル側に傷もつきますし誤ってクリップを飛ばして紛失の可能性もあります。
金属プレートの上でも良いのですが、滑らない様に少し硬めの樹脂板を使っています。
【ジェットニードル ~段数調整】
段数を変えてもジェット交換と違い供給される燃料の量に変化はありません。
燃料の送られるタイミングをコントロールして早くするか遅くするかの調整と考えて下さい。
【組み立て】
組付けは分解と逆手順で良いのですが、一部にコツが必要な部分があります。
ピストンアームの取り付けのコツは、このシムをアーム側に少し硬めのグリスで固定します。そうする事によってシムのズレがなく、ビスをネジ穴へ容易に取り付ける事が出来ます。
ビスはまず前方から取り付けします。仮止めの状態で後方へビスを挿入。
最後に前後均等に締め付けて完了です。
(取り外しは前後どちらからでも良いのですが、双方を緩めてからビスを取り外す様にします)
キャブレター調整
ジェット交換とニードル段数の調整をして試乗
ここまで調整して改善傾向が見られるのであれば更にもう1段ニードルを下げて様子を見ます。
それで変わらないのであればパイロットジェットの番手を落とします。
・Z1でニードルクリップ2段目(1段下げ)+パイロットジェット12.5番(標準17.5番)
・Z1000MK2でニードルクリップ1段目(ニードル最下部)+パイロットジェット15番
パイロットジェットの変更とニードル位置変更を行った場合は常に「エアースクリュー」を調整します。基本の開度は一番締め込んだ所から(ギュっと締めずに軽く止まる位置を「0点」とします)、1回転と1/4回転戻しとなっていますが、前述のセッティングをすると大体は1~2回転戻した範囲で収まる筈です。
ここまで純正キャブレターのセッティング方法を解説してきましたが、キャブレターフロートの油面調整がされている事が前提での作業です。
基本的整備が完了している車両についてのセッティング方法ですのでここは十分にご理解頂きこれらの作業を始めて下さい。