今日平成31年4月30日、平成と言うひとつの時代が終わりを告げようとしています。
明日5月1日は『令和』として新しい時代が幕を開けます。Z1/Z2ひとつを題材にとっても話は尽きず、3つの時代を駆け抜けているという驚異的・圧倒的な人気を誇るオートバイとして永遠に語り継がれていきそうな程の盛り上がりです。平成の時代ではフルノーマルでコンディションを保つよりもカスタムされる事の多かった車両ですが今日では新車当時の部品がもてはやされ、状態が悪くとも高値で取引されている現状には驚かされます。CB750はカスタムされるよりも当時の部品に拘ったレストアが主流でしたがZまでもがそうなるとは当時予想は全く出来ませんでした。
Z1/Z2~昭和カスタム
カスタムショップ「ワークス」に代表される前後18インチ、ショート管に当時主流のモリワキ製アルミスイングアーム。6~10箇所の補強が施された車体にZ2で860cc、Z1で998ccまでボアアップされたエンジンを搭載するのがこの時代のカスタムの形。キャブは既にCRスペシャルがありましたが、純正VMのジェットを濃くしてファンネルで対処と言うのが殆どでした。リヤサスはオーリンズ、フロントフォークをASSYで交換するのは稀でノーマルベースでスプリングの強化と油面調整程度。ブレーキは大径ディスクにキャリパー変更。マスターシリンダーはサイズ合わせを重要視せず安易に前後共に5/8のピストンサイズ。ホイールはマグネシウムを使いタイヤはバイアスでセットアップ・・・。それが昭和を代表するカスタムでした。
Z1/Z2~平成カスタム
イエローコーン、ミッドナイト、ビトーR&D、ワークス、この4社が台頭しカスタムショップの代名詞として君臨していました。
中でもミッドナイトは『金子レプリカ』と言う言葉が出来たくらいに大勢からの支持を集めるほどになったカリスマ的カスタムショップであり、現在一般的になりつつある『17インチカスタム』の先駆者でもありました。
1990年当時現車を見に「カスタムモーターショー」へと足を運びましたが、エンジン内部から車体の隅々まで造詣が深く眺めるほどに感嘆の声をあげてしまう車両でした。様々なショップの外注先として仕事を請け負っていましたが、時代の流れによってその殆どの取引先が倒産した為に回収できず共倒れとなった非常に悲しい経緯があります。画像の車両はフロント17インチ・リヤ18インチですが、リヤを17インチにして現在の技術で再セットアップすれば未だに負けを見ないトップクラスのZ1カスタムであると確信します。
アパレル業界から派生した「イエローコーン」。雑誌CMに使った代表者所有のカスタム車両、黄色い「Z1-R」。これが注目を浴びてジャケット以上の大反響を呼び狙いすましたかのようにカスタム業界へも参入した異端児的存在のショップ。当時バイク用ジャケットはあか抜けた物が無くここに新風を吹き込んだのがこのイエローコーンで、流行した「第三京浜」集合の際のチケットとも言える派手なジャケットが象徴的でした。この1990年に於いて「鈴鹿にいるウチのスタッフはZ1で300kmだせるデータを持っている」と豪語していましたが、実は外注依頼しているレース屋さんを指しているものであってバイクカスタムの殆どを自社で行っていなかったのが現状です。それをおいてもテイストオブフリーランス(現テイストオブツクバ)で常勝だったのは素晴らしい事でした。
「ビトーR&D」ここは前出の3社とは一線を画し、一見ノーマルの様相ですがよくよく見れば世界一流の部品が程よく綺麗にまとまっている具合のカスタム。惜しげも無くロッキードやテクノマグネシオ、エンジンに至ってはかのコスワース・ピストンを使い1260ccまでスープアップ。当時まだ学生であった私にはまさに「オトナのカスタム」でしかありませんでした。ハンドルからウインカー、フロントフォークに至るまで、果てはステップ迄純正ノーマル。その頃の自分には派手さが感じられずミッドナイト方面へと気持ちは向いていましたが、今の年齢になってようやくビトーさんの全てに於いて無駄のない車両造りの姿勢に共感を持つ様になりました。
他にも「翼コーポレーション」と言うお店があり、ここはペイントに力を注いでいましたがやはり倒産。預けられていた多くの車両は転売されオーナーの元に戻る事は無かったそうです・・・。
「タバックスエンジニアリング」の田端さん。自らを「バイク業界の天草四郎」として、1990年に愛車のBMWを背景に撮ったニヒルなブロマイドを「10円」で販売していたかなりお茶目なショップ代表。その反面ではZ2をアルミフレームにし公認迄とってしまう技術の高さは他に類を見ないもの(しかも複数台!)。それ以前にアルミフレームのZ2を8耐で走らせようと本気で考えていた猛者ですので市販化も想定のうちだった事と思います。近年名高いカスタムコンテスト世界大会で優勝した経験も現在のカスタムに生かされていると感じます。ここの凄い所は車両の販売など無く、殆ど全てが「加工費用」だけで30年以上支えられていると言う事です。
「クラスフォー」。現在ドラッグレースに傾倒していますが、この当時はバリバリの空冷4気筒カスタムのお店でした。クラスフォーとはアメリカでの大型免許の区分を示す言葉でその頃日本国内で大型と言うと「限定解除」。誰もが憧れるものの象徴として店名を付けたのだと思います。
この車両派手さはない物の、ノーマルフォークベースで実測240kmオーバーを実現(メーター読み250km以上)。その後別冊モーターサイクリストの個人売買欄にて売りに出されていたのが衝撃的な思い出として心に残っています。
自身もずっと『Z』に携わりつつこれからの動向を見据えていきたいと思います。