ジョグZR/SA16J ジョグのミッション修理 ~ミッションオイル交換とクランクケースカバー・チューニング

【さ~そ】
SA16J ジョグ ~ミッション整備とクランクケースカバー加工
ジョグ/SA16J ~ミッション整備とクランクケースカバー加工

型式『SA16J』のミッション整備について解説

ヤマハのミッションは弱く最悪の場合、クランクケース交換となってしまいます。
ですのでこまめなミッションオイルの交換とベアリングの入換えは必須項目となります。

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ジョグのドライブシャフト ~プライマリドライブ(ギア)

ヤマハのドライブシャフトはベルトカバーで支持

ヤマハのミッションの弱さはそのシャフト支持方式からも判断出来ます。ベルトカバー(クランクケースカバー)側にベアリング支持されたシャフトは駆動力に対しての強度不足を補う為です。それに対してホンダの車両はクランクケースカバーでの支持は無くても十分な強度で、ミッション負担も少なく私の方へ壊れてしまった車両の入庫は未だありません。

 

画像1番がプライマリドライブギア、9番がそれを支持するベアリングです。

ミッションの分解と壊れたベアリング

ミッションの分解はドライブベルトとクラッチアッシーの取り外しから

ベルトとクラッチを外すとミッションケースが現れます。カバーを外す前にケース下側のM8ドレンボルトを外して、ミッションオイルを抜き出してからミッションカバーを外します。

M8ドレンボルト・工具サイズ12mmのボルトです。

メインアクスル部のワッシャーは2種2枚使用。テーパー状の方(山型頭頂部が外向き)が奥で、平らなワッシャープレートが手前にセットされる様になります。

今回の修理ではメインアクスル奥のベアリングが砕けてバラバラになっていました。
ベアリングのインナーリングは変形してメインアクスルに固着してしまっており、抜けたベアリングの球を噛み込んだギアの歯は見るからにダメージが大きいです。

ベアリングの全てと(3箇所)メインアクスルを交換してもプライマリドライブギアは大きく振れます。この事からクランクケースカバーでの支持は必須になる構造であると確認出来ます。

アルミ製・社外のオイルキャップに交換された今回の車両、Oリングが付けられていませんでした。その為給油口付近は漏れたオイルで汚れ、ついには少なくなったオイルのせいでベアリングへの負担が大きくなりやがて壊れてしまったと言う経緯の様子です。

【ミッションオイルの漏れを察知する】

ドライブアクスルのベアリングを抜いた所です。
オイルシールとベアリングのセットされる部分の間に穴が開いていますが、この穴は下方に向かって外部に貫通しています。これは奥のオイルシールが抜けた時のお知らせサイン用で、外へオイルが流れ出す事によってミッションオイルがブレーキドラム内へ侵入する前にオイル漏れを知らせる為の通路なのです。時々はクランクケースカバー下を覗いてこの穴からオイルが出てきていないかをチェックしましょう。

【駆動系整備の注意点】

クランクケースカバーのガスケットはプーリー、ベルト、クラッチを取り付ける前にセットします。ここもホンダとの大きな違いで、ベルト廻りを組んでしまうと中央部分で上下が繋がったガスケットは取り付け出来ず再分解・二度手間となってしまいますので注意が必要です。


SA16J・ジョグのミッションオイル量

データとして検索してもヒットせず

ネット上で探してもなかなか出てこないジョグのミッションオイル量。油種はギアオイルを使用し、オイル量は交換時「100ml」分解時「110ml」となっています。

「cc」と「ml」、どちらも同じ量です。
「cc」は空間「ml」は体積としての表現での違いで量としては同じ分量です。

紙で作った筒を使いメスシリンダーで規定量を量ったオイル「110ml」を少しづつ注入します。給油が終わったら新しいOリングを付けたキャップを取り付け作業終了です。

 

メスシリンダーは200~250ml程度の物が使い易いでしょう

 


クランクケース加工 ~ベルトへのダメージを軽減

これはジョグのみならずスクーター全般への推奨加工

50~125cc、排気量とメーカー問わずに行いたいチューニングです。スクーターのベルトには当然の事ながらテンショナーはありません。ベルトは変速時に外周が変化するのと常に引っ張られているのでその必要が無いからです。しかし動作中ベルトは大きく暴れ、振れる事も多くケース内を叩いてしまうのも事実です。

黒く付いた跡がベルトの触れた部分です。

良く見るとカバー内側はかなり荒れた表面ですのでここにベルトが触れると相当なダメージになります。ここは耐水ペーパーとコンパウンドを使ってバフ仕上げに近い表面処理をする事で、ベルトをケース内で引っかからせずスムーズに滑らせる様な仕様に加工します。

まず600~800番程度の耐水ペーパーで水研ぎし荒仕上げとします。
ここでは錆びさせない様に水の代わりに潤滑剤を使って研いでいます。

次にコンパウンドを使って中仕上げ~仕上げまでをこれで行います。

 

ワコーズの『メタルコンパウンド』はこれ1本で中仕上げから仕上げまで可能な便利品です


 

ベルトの当たっていた部分より少し広げた範囲までを仕上げます。
このジョグの場合はマスキングテープで示した部分までがその範囲です。

体感の出来ない地味な加工ですので殆ど情報として挙がってきませんが、抵抗を無くしベルト寿命を考えると推奨出来るチューニングと言えそうです。