カワサキ W1S/W1SA/W3 キャブレター修理のノウハウ・整備編~目視で分かる不調の原因と燃料ボルトからのガソリン漏れ対策

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W1S/W1SA/W3 キャブレター修理
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不調時の知られていない目視での点検とその修理法

「W」の不調の原因は様々ですが、ここではキャブレター修理に特化して説明をしています。

エンジン・点火系・電装系が正常なのに片側調子が悪いなどの症状に参考になるかもしれません。そして必見、皆さんお悩みのキャブレター・バンジョーボルトからの「燃料漏れ」の対策方法を公開しています。

オーバーホールしたのに調子が悪い

~~~何度も分解するのは構いませんがその度に専用溶剤を使うと内部通路が溶けて拡大され、供給されるガスが濃い状態になって調子を崩してしまいます。これは何も「W」に限った事ではありませんので、十分に気を付けて旧車整備は労わって行いましょう。

キャブレター内部に目をやると、メインジェットノズル横にある通路加工穴が小さな真鍮球で埋められています。キャブレターの新品生産時は縦横斜めの組み合わせで燃料通路は作られており、その加工は極小ドリルで穴を開けて行われ通路作成後の余分な穴は当然塞がないとなりません。そこで前出の「真鍮球」の登場、これで加工穴を埋め方向の定められた通路が作られるのです。

 

矢印の2カ所の球がどちらか落ちていて(無くなっていて)吹けない原因になっていることが数台ありました。

ここは意外な盲点ですのでこの記事を見るまで分からなかった人が多いと思います

 

この修理方法としては鋼球・スチールボールの取り付け作業だけという至ってシンプルな物。数種類あるサイズから一番近い、それでいて穴よりも若干大きいサイズを探し求め埋め込みます。

埋め込み後、脇をポンチで潰して「カシメ」るようにしてこの作業は完了です。

キャブレター・バンジョーボルトの壊れるメカニズム

~~~『Wシリーズ』の最重要修理ポイント、「キャブサイドボルト」の修正です。

殆どの車両がこのネジ山にダメージを受けている状態が現状です。なぜそうなってしまうのか~?と言うと、シリンダーヘッドに直付けのキャブレターは車両からの振動をもろに受けこのバンジョーボルトは緩みます。緩んで燃料が漏れると当該のボルトを締め込みますが純正バンジョーボルト長は短く、本体と噛んでいるネジ山もかかりが浅く「ギュっ」と純正のボルトを力強く締めれば簡単に「ナメて」しまいます。1回で壊れる事はありませんが、「緩む→締める→緩む→今度は強く締める・・・」の繰り返しでネジ山は壊れると言う仕組みです。

燃料漏れ修理・対策~キャブレター・バンジョーボルト製作

ネジ穴手前4山程度がナメているだけならば長いボルトに交換して対処します。ボルト頭下寸法は「21mm」でベストな長さです。

→市販品のアルミボルトに拡大穴開け加工を施し作成出来ます

純正ボルトに合わせて2カ所の穴を拡大すればそのまま使うよりも燃料供給の問題が無く完璧な仕様です。 錆に強いステンレスを使いたいところですが、バイクの振動はグリップエンドの例でも分かる様に末端で最大になりますので、ここのボルトも軽量な方が振動伝達での「緩み」に対して有利ですので「アルミ」を選ぶのが正解です(私が整備する車両に関してはステンレス製をバフ仕上げにして使う事も多いです)。

 

ダブル最重要の「キャブレター・バンジョーボルト穴修正」

では奥のネジ山まで壊れたキャブレターはどうするのか? そうなると壊れたネジ穴を削り取り、新しくネジ山を埋め込む「リコイル作業」を進めます。

 

 

こちらが「M10-P1.00」用のリコイルキットです

オーバーサイズ・ドリル、バケット(新しいネジ山)その他のセットです

 

 

下穴用ドリルサイズは「13 / 32」です

 

実際のキャブレター・リコイル修理解説

~~~「M10-P1.00」リコイルキットは特殊で、無メーカー品でも1/2諭吉します

 

【作業前準備】

 

加工に際して「水平」を出す為に、逆サイドに開いた穴にソケットレンチ用ソケットを嵌めてボール盤にセットします

 

使用ソケットは「スナップオン」製「6mm」

ソケット外径は「8.80mm」

 

 

 

キャブレター側穴内径は「8.85mm」です

 

 【作業開始】

 

下穴開けはボール盤が無い場合はハンドドリルでも可能ですが、なるべく垂直にしたいのでタップハンドルに固定して「手回し」の方が良いと思います(垂直を確認しながらの作業)。

 

素材が古いアルミ製ですので手回しでも作業は可能です。

★仮に曲がってしまっても、後述の方法で燃料漏れを止めますのであまり問題にはなりません

~~~軽くドン付きまでさらってみました。 これ以上削るのは「NG」です

 

 

水平の確認が目視で判断し易いように、逆サイドのソケットはそのままにタップにてネジ切を行います。

 

 

「半回転~1回転切ったら半回転戻す」の作業の繰り返しでネジ切は行います

~~~あらゆる角度から見ながら・確認をしながら垂直にタップを立てていきます

 

 

ネジが切れた状態です

 

 

 

次の作業「リコイルバケット挿入」がし易い様に、上面を軽く面取りしておきます。

★面取りは「M11 / 11.0mm」以上のドリルがあれば手回しで簡単に行えます

~~~面取り作業をした方が次の作業・バケットの挿入がスムースに行えます

 

 

リコイルバケットは長さが「10mm」の物を使いますが、キャブレター側の深さに合わせてネジ山を「3山」分カットして使います。

 

 

バケット挿入用工具の先端はメーカー問わず、深さに合わせて位置の調整が出来ますのでここを調節してから使うようにします

~~~ここはレールの上を伝う様にすんなりといくのが通常ですが、稀に山を飛び越えてしまう事もありますので慎重に! (タップによる入り口付近の荒れで起こる事象)

 

これで完成です

最後に全ての通路にパーツクリーナーを流し込み、エアブローにて最終仕上げをして完成です

~~~これにロングボルト&後述方法で燃料漏れとは無縁の車体に様変わりします

ボルトに使うワッシャーは〇▽▲×”にする~秘伝の初公開

簡単・確実・低価格~の範疇でいくとワッシャーは使わず「Oリング」を使います

ここは当然耐油性でなければいけないのと、耐久性能も欲しいので線径が太い物を選びます(私がいつも使うのは信頼性の高い国内4メーカー純正部品です)。

~~~これはパーツリストに記載されているサイズを片っ端から調べ、何個も注文してより良い物を探した結果行き着いた物です。

固く締めなくともゴムシーリングですので緩む問題も無く、例え緩んでも再度軽く締めれば問題なし(コネクターが動く程度で十分な締め込み具合です)。先の「振動対策」にもなりますので、ボルトは鉄でもステンレスでも対応します。

装着には若干コツがありOリングにはグリスの類を「塗らず」ボルトとコネクターに通すようにしないと、ボルトを回転させて固定する時に潰れたOリングが滑ってはみ出てくる可能性もありますので注意が必要です・・・。

高くても1本数百円ですので左右合わせて4本あっても2千円未満。これならば毎年交換してもお財布に優しく、また出先でのスペアにも持っていけますので一石二鳥どころか三鳥になります。

 

以上がキャブレター修理特別編の解説全貌です。
ネット検索しても出てこない㊙のスゴ技です。
お悩みで良質な情報をお探しの方への朗報・プレゼントです、どうぞ参考になさってください。