W1S,W1SA,650RS/W3 ~キャブレター同調とエア調整

W3
W1S,W1SA,W3 ~キャブレターの同調作業について
W1S,W1SA,W3のキャブレター・セッティング

ここではキャブレター同調とパイロットスクリューの調整を解説しています

以前にも詳しく解説していますが、おさらい・再考として新たに記事を書いています

 

 


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Wのキャブレターセッティングの基礎

調整は二通り。キャブレターの同調とエア調整です

【キャブレター同調】

まず最初に行うのがこの同調作業です。同調とは左右独立して作動するWのキャブレターに同じ動作をさせる為の基本的な調整です。振動の多いWでは定期的に行う整備ですが、アクセルワイヤー交換時も必ずセットで作業を行います。マニュアルをお持ちの方は存じている作業方法ですが、マニュアル通りにいかない重要な部分もありますので最後までお目通しされる事を推奨致します。

~~~キャブレターに詰まりや汚れが無い状態でのセットアップが基本

不調・詰まりの兆しがある時は洗浄力の強いワコーズ・エンジンコンディショナーにて洗浄です


 

  《作業手順》

  1. アクセルワイヤー(ハンドルスイッチ側)の遊びを大きく取る。
  2. スロットルストップスクリューを緩めてピストンを最下部位置にする(キャブレター横)。
  3. キャブレタートップキャップのケーブルアジャスターを回転させ遊びをなくす。
  4. スロットルストップスクリューを締め込んでピストンに触れる位置にする。
  5. パイロットスクリューを『1/2回転戻し』の位置に仮調整。
  6. アイドリング調整後パイロットスクリューを回し一番回転数が高くなる所を探す。

 

①ワイヤー調整 ~スイッチ側
ハンドルスイッチ側・アジャスターを締め込んで(縮めて)アクセルワイヤーの遊びを大きくします。
***最後まで締め込まず、ネジ山が5mm位見える程度が丁度良い具合です。これは最後の遊び調整で必要になる部分です。


 

②キャブレターピストン
「-」頭のアイドリング調整用のスクリュー(キャブレター横)を反時計回りに回転・緩めて、キャブレターピストンを最下部の位置にする。

 


 

③ワイヤー調整 ~キャブレター側
トップキャップにあるワイヤーの付く部分・ケーブルアジャスターを回転させてワイヤーの遊びを「0」にします。ワイヤーを軽く引っ張りながら行うと分かり易いです。

 

 


 

④スロットルストップスクリュー
ゆっくりと時計回りに回転させ締め込み、ピストンに当たる・触れた位置を「0点/零点」として、そこから1回転締め込んだ所を基本の位置とします。

 

 


 

【『0点位置』のセット方法】

要領としては片手でアクセルを開閉しつつ、もう一方の手でスロットルストップスクリューに触れながら振動を頼りにスクリューがピストンと接触する位置を探し出します。

 

 

人差し指をスクリューの頭頂部にあててアクセルを開閉すると接触位置が判断し易いです。スクリューを若干押し気味&上に向ける要領で探るとその感覚が掴みやすいです。

 

ここがマニュアルと違う部分で、マニュアル解説には「スロットルストップスクリューを最後まで締め込んだ所から4回転戻した所を仮セットとする」となっていますが、実際にはその位置でアイドリングはせず、エンジンは止まってしまう程ピストンは下部にあります。これはスクリュー先端部とピストン側の当たり面が消耗して擦り減っている為で、前述の仮セットでは調整になりません。今回のサンプル車両に於いては左右4回転戻した位置・スロットルストップスクリューの飛び出し具合は双方均一ではなく左右で大きく異なる位置でした。片側のピストンの消耗が大きい事に対して、もう一方のピストンが消耗していない場合で考えてみます。左右同じ様に底好き位置までスクリューを締め込んだ時に消耗度合いの大きい方はピストン位置が低いのに対し、反対側はピストンが高い位置にあると言う事になります。マニュアル値はあくまでも部品が「新品」である事が前提ですのでこの辺の事情が大きく変わってきます。

スロットルストップスクリューは先の「0点位置」から1と1/2回転(1回転半)締め込んだ所で大体は合ってくるはずです。最終的にエア調整をして1回転程の締め込み位で落ち着きます。

⑤パイロットスクリューの調整

ここはマニュアル値の「1/2回転戻し」の位置で仮セットの状態にしておきます。

 


 

⑥アイドルとパイロット調整
パイロットスクリューを反時計回りに緩めていくとアイドリング回転数が上昇してきます(不調なキャブの場合締め込んで回転が上がってくる事も有ります)。回転が一番高くなる所を見つけて、アイドリングが上がった分を修正して完了です。パイロットスクリューは左右同じ戻し回転にならなくても、それが正解位置です。

 

《パイロットスクリュー》
スクリューを緩めていき回転が上昇した後、ある一定の部分から上がりも下がりもしなくなる所があります。それが見つかったらその位置が2回目の仮セット位置です。次は実走して1/4~1/8回転締め込むか開けるかを判断して下さい(セッティングの基本は濃くなる方に回しますが、これは後述していますのでそれを参考に)。もちろん2回目・仮セット位置が決定位置になる事もあります。

《アイドルストップスクリュー》
基本的にはアイドルストップスクリューは左右同じ位置にしますが、左右の排気口に手に当てて確認し、左右が同じ排圧になる様に微調整する場合もあります。その際はキャブレター側トップキャップ部分にてケーブルの遊びを再確認します(これは左右でピストンの位置が変わってしまう為です)。


 

 

ここまで終わったら最後にハンドルスイッチ側のワイヤーアジャスター部分で2mm程の遊びを作って作業は終了です。ハンドルを左右に切ると遊びが変わりますので、一番きつくなる方向で先の「2mm」に調整する様に気を付けて下さい。
一番最初の段階でここを最大に縮めてしまうと、この時点で遊びを持たせる事が不可能になってしまいます。ですのでまず5mm程度ネジ山が見える位で調整を始めます。

【エア調整】

一般的に「エアスクリュー調整」と呼称されていますが「パイロット・エア」でも同義語です。
キャブレターメーカーでの正式名称が京浜はエアスクリュー、三國ではパイロットスクリューとなっています。

名称は同じでも調整による作用は全く別物ですので注意が必要です。
京浜・エアスクリューはその名の通りスロー系に効いてくる空気量をコントロールしています。締め込むと空気量は減り燃料が濃い状態になります。
ミクニ・パイロットスクリューは空気と燃料が混ぜ合わされた混合気の量を調節しています。締め込むと混合気の量が絞られて薄い状態になります。
この様にメーカーで正反対の作用になっていますので要注意。
FCRのセッティングを例にすると、エアスクリュー開度が1/2回転戻しまで絞られてしまう場合等はスロージェットの番手を大きくします。反対に2回転と1/2~3回転戻しで合う場合は番手を落として(小さくして)調節します。こうしてスロージェットの番手を変えて「1回転~2回転半」程度の範囲に収まる様に調整していくのです。

キャブレター同調内の⑤~⑥の項目で解説されているのがこのエア調整の方法となります。
項目ではキャブレター同調とエア調整を分けていますが、実際には同調・エア調整・アイドル調整の3点をセットで行って初めてキャブレターの調整になります。

キャブレター同調イコールキャブレター調整の図式です。

整備の合間のブレークタイムに・・・。