他車種の参考にもなる基本的な構造のフロントフォークです
カートリッジ式ではありませんので分解・組み立ては容易に行えます。
他メーカー含め同様の構造を持つ車種も多いので参考になる解説と思います。
フロントフォークの分解
インナーチューブ内にあるロッド「シリンダーピストン」について我々はインパクトを使ってボルトを緩めますが、一般的にはインナー内側から回り止めに固定する特殊工具が必要になります
(フォークカートリッジホルダー)
ゼファー750の工具サイズは「27mm」
市販の工具は5000円程しますがおそらく一般には1回~2回程度の使用だと思います。
ヤマハ純正工具ですと2000円を下回る販売価格でゼファー750でも使えますのでお勧めです。
六角ナットとシャフトを使ってこのホルダーを作る事も可能ですが、長いシャフトを用意してナットとシャフトを溶接しないとなりません(ダブルナットでは緩んでしまう事が多い)。
確実な作業を行う為にも一度きりとは言え専用の物を使う事が推奨されます。
トップキャップは車体にフォークが取り付けられた状態で緩めておきます(フォーク単体にしてしまうと固定出来ず非常に回し辛くなります)。
フォークを車体から抜いてインナーとボトムケースを固定するボルトを緩めて取り外します。
フォークを固定して一気に回すことによってインパクトが無くても緩める事が可能ですが、年式によってボルトにネジロック剤が塗布されている場合がありますのでその場合は途中から回らず中で供回りする事になりますので注意。
フォークオイルを抜きインナーチューブを上下させてオイルシールとガイドブッシュごとボトムケースより抜き去ります。下から上に素早くスライドさせる事によってスライディングハンマーの要領でインナーが抜けてきます(およそ10回程度)。
【今回交換の純正部品】 価格は税別表示
- パイプ、フォークインナー : 44013-1339 ~16700円
- シール、フォークアウター : 92093-1359 ~~~770円
- シール、オイル : 92049-1356 ~~~720円
- ブッシング : 44065-1085 ~~1210円
- スプリング、フォーク : 44026-1548 ~~3880円 (C11用)
- ガスケット、ドレン : 11009-1553 ~~~210円
- Oリング : 670B3032 ~~~300円
フロントフォークの組み込み
フォークの組み込みには一部注意点があります
オイルシール・ストッパーと呼ばれるワッシャーには上下があります。
オイルシール内側とトップキャプに使うOリングにはシリコングリスを塗布して組み込みます。
インナーチューブにオイルシールを通す際の傷防止にインナーチューブ面にラップを巻いてフォークトップの角とインナー面の錆などによる「荒れ」から保護する手法があります。
グリスを塗って若干斜めにアクセスするだけで慣れた従事者が行うとラップは必要ありませんが、初めての作業者はラップをインナーチューブ上端部に巻いて保護する方法を推奨します。
インナー面に錆びの発生が見られる場合は、防錆潤滑剤を塗った1200~1500番の耐水ペーパーを「縦方向」に擦って落としてからオイルシールを通します。
フォークインナー面について
距離を重ねている車両で摺動部分がピカピカに光っているものがあります。
インナーチューブ面は面粗度が高いとオイル漏れの原因になります。レーサーは作動性を重視して面粗度を上げていますが、市販車両はオイルが漏れない様に耐久性を考慮して面粗度は適度に保たれています。
光っていると言う事は長年の摺動で研がれて面粗度が上がっていると言う事。
この場合はその部分を600~800番の耐水ペーパーを「横方向」に回転させながら防錆潤滑剤を使って研いで面を荒らして対処します。
オイルシールの取り付け方法
専門店では専用工具が揃っていますが、個人レベル・DIYで全て購入と言うのは難があります。
確実な作業には確実な工具が不可欠ですが自作出来るものは自前で調達するのもまた楽しく、それがまた個人整備の醍醐味でもあります。
オイルシールの打ち込みはサイズの合った「塩ビパイプ」を使いハンマーで叩いて挿入する方法が簡単だと思います。その際はオイルシールと塩ビパイプが直接当たらない様に(叩かれてオイルシールが損傷しない様に)、前述の「オイルシール・ストッパー」を純正部品で1枚購入してそれを間に入れて使うのが良いでしょう。
フロントフォーク・オイルレベルの調整
規定量注入ではなく左右合わせる為にレベル測定
油面とはスリーブ(カラー)・ワッシャー・スプリングを全て抜いた状態で、インナーチューブを一番下まで押し込んだ状態で計測します。トップキャップを外したインナーチューブ上端面からフォークオイル上面迄の距離を測定します。
オイルを入れたらインナーチューブを上下にストロークさせ中の空気・気泡を抜きます。
10回前後ストロークさせたら今度は斜めに回転させながらストロークさせて中の突起に隠れた気泡までを抜く様にします。
オイルを少しづつ注入したら計測・・・、を繰り返して規定値まで合わせます。
オイルレベル・油面「90mm」ですので、メジャーを「120mm」挿入し目盛り「30mm」で規定値の90mmになります。
この様にして左右の油面を調整します。
組み上がったフォークの作動性を上げる
作動性を向上させる為、高性能な潤滑剤を使うのもひとつの手段です
潤滑剤だけでスムーズに作動するのか?
と言う問いに対してはっきりと「はい」と答えられる製品がこの「ベルハンマー」
インナー摺動面にスプレーするだけで確実に作動性が向上します。使っているうちに徐々に馴染んでくると組付け当初よりも軽くなります。
オーバーホール時であればオイルシール内側に塗布して組むとより一層効果が長持ちします。
カワサキの車両で幾つかあった事例ですが、インナーチューブとオイルシールの双方を新品で組んだのにすぐにオイルが漏れてきてしまった事があります。再度シール交換しても状況は変わらずオイル漏れは止まりませんでした。
恐らくインナーチューブのメッキが指定値外で微妙にフォーク径が細かったか、面粗度が関係していたのだと推測されます。
そんな経験から必ず使う潤滑剤がワコーズの「バイダス・ドライ」です。
これは粉末タイプの潤滑剤で車のベルトの鳴きを解消させたり、パワーウインドゥの潤滑に使われる製品です。
ですが実は隠れた一番の性能は各種ダンパーのオイル漏れ修理なのです。
オイルシール内側にスプレーしてからシリコングリスを塗布、再度その上からスプレーして組み付けるようにしています。
本来は分解整備しないとなりませんがお客さんの諸事情によってそう出来ない場合には、オイルが漏れ始めている車両のダストシールをめくって前輪を浮かせた状態で脱脂洗浄した後にスプレーして対処しています。
ベルハンマーは他の潤滑剤との相性も良いのでバイダスドライと併用してもその性能に変わりはありません
ゼファー750シリーズ~フォークサービスデータとサスセッティング
ゼファー750初期からRSタイプまでの解説
- C1~C4 ~フォークスプリング : 44026-1481 (廃番)
- C5~C11~フォークスプリング : 44026-1548 (税別3880円)
- D型(RS)~フォークスプリング : 44026-1611 (税別3880円)
- C1~C4 ~402.5mm 油面:110mm (470ml)
- C5~C11~396.5mm 油面: 90mm (490ml)
- D型(RS)~391.5mm 油面:113mm (467ml)