旧車のフューエルコック~負圧式燃料コックのメンテナンス

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Z系からカタナまで ~旧車の負圧式コックを解説
Z系・カタナ~負圧式燃料コックの解説

フューエルコックがオフにならずホースを外すとガソリンが止まらずに出てくる・・・。

ここではフューエルコックの改善方法を解説していきます。

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負圧式コックの構造

負圧式コックの切り替えに「OFF」は無し

Z750FX/Z1000Mk2,GSX1100S/カタナなど、旧車でも1970年代後半以降この負圧式コックが使われる車種が多いです。
(ホンダよりもカワサキ・スズキの方が導入時期が早い)

負圧式コックにはポンプを動かす為のバキュームホースが付いています。
このホースは「インシュレーター」と呼ばれるキャブレターとエンジンを接続するゴム製のダクトと繋がっています。
エンジン始動状態で負圧が生じ、その作用によってコックのダイヤフラムが動いてガソリンがキャブレターへ流入すると言うメカニズムです。

 

画像のコックは下が「ON」上が「RES」
右は「PRI」となっているのが分かります。
(クリックで画像は拡大されます)

コック切り替えポジションに「OFF」は無く、「ON」・「RES」・「PRI」の
3種類となっています。

  • 「ON」 ・・・ 通常使う位置。ガソリンが流れるポジション。
  • 「RES」・・・ 「リザーブ」位置。リザーブの頭文字をとっています。
    「ON」でガス欠になった時に切り替える予備タンク位置。
  • 「PRI」・・・ 「プライマリー」位置。ここに合わせると強制的に燃料が流れます。

~~~と、この様な位置関係になっています。

「予備タンク」とは言ってもタンク内で仕切られている訳ではありません。コックから2本・2種類の長さのパイプが出ており、「ON」では長い方から「RES」で短い方から燃料を送る仕組みとなっています。短いパイプは単にフィルターで、実際にはタンクの底面からガソリンが流れる仕組みとなっています。

「PRI」・プライマリーの必要性と使い方

聞き慣れず馴染みのないプライマリー

「PRI」はバッテリーの弱い時にガス欠になってしまった時などに使います。
その構造上、負圧式はエンジンを掛けないとキャブレターへガソリンを送れません。
ガス欠時にオンからリザーブへ切り換えてもすぐに燃料は流れず、しばらくセルを回してキャブレターへガソリンを送らないとエンジンは掛かりません。ですのでバッテリーが弱いと予備タンク切り換え時にバッテリー上がりを起こしてしまう可能性もあります。そんな時はこの「PRI」・プライマリーに切り換えて強制的に燃料をキャブレターへと送ってあげるとトラブル回避になります。
筆者の様に現場での作業従事者はキャブレターOH後にエンジンをかける場合に、この「PRI」位置にして30秒程待ってからセルを回す様にしています。こうしてバッテリーに負荷を掛けない様な作業を心掛けています。

負圧式コックに「OFF」は無い

燃料ホースを外してもガソリンは出てきません

前出のプライマリー位置にしない限り、オンとリザーブ位置で燃料ホースを外してもガソリンは出てきません。しかしコックの不良で燃料が流れたままになってしまう事もあります。

負圧式コックはエンジンが掛かっていないとガソリンは流れませんので、エンジンオフ・エンジンが止まっている状態での「ON」・「RES」位置が「OFF」になる訳です。
コック内部で使われるパッキンとOリングの不良でオフにならずガソリンが流れたままになってしまう事が多いのですが、それら全てを交換しても直らないケースもあります。


オフでガソリンが止まらない原因とその対処方法

主な原因と整備方法を解説

 【パッキン不良】
コックを分解すると切り換えレバー奥にOリング、そして切り換え用の丸い窓のついたパッキンが入っています。

 

この顔に見える丸いパッキンが劣化して隙間が出来てしまい燃料が流れ込んでオフにならない症状が一般的です。
稀にレバー側の当たり面が腐食で荒れていて隙間が出来ていたケースもありました。

 

【Oリングの不良】
コック裏側を見るとダイヤフラムの入った部屋があります。
「+」ビスを外すと分解出来、分割すると先端部にはOリングが付いています。

ダイヤフラムカバー下から出ているパイプにバキュームホースが繋がります。
カバーを外すとダイヤフラムが確認出来ます。ダイヤフラムとカバーを分割するとその中にOリングを押し付けて燃料を止める為のスプリングが入っています。


 

 

燃料通路を遮断する役割を担う「Oリング」。
これが劣化・変形して燃料が遮断出来ずにオフにならない症状が一番多いです。
裏側のスプリングを二重にして強く押し付ければと思い試してみましたが「×」。

このサイズのOリングは特殊なのと、この部分だけ部品設定が無い車種もあります。
間に合わせで燃料を止めたい場合はこのOリングを逆さまにする裏技が良好な対処方法です
これは経年劣化でテーパー状に変形し当たりの悪くなった面と、押し付けられていない元のままの形のOリング面を入れ換える事によって当たりの改善を行おうと言う整備方法です。

Oリングに関しては他メーカー・他車種で同形状の物を見つけて合わせる場合も多く、
様々な車種・部位に於いて数々注文・調べてきましたのでその知識は豊富です。
その中での注意点は青い素材。これはガソリンで伸び切ってしまう材質ですので使えません。
(筆者が探す場合は材質チェックの後、実際に燃料に浸して様子を見ています)

 

【ダイヤフラムの不良】
一番稀なケースですが、ダイヤフラムの不良も確認されました。

 

この黒いシートが「ダイヤフラム」。
これが弱るといくらスプリングを強くしても燃料は止まりません。目視で判断出来ないのでここに辿り着く迄に時間を労した記憶があります。

目視で判断がつかないので分かり辛いのですが、Oリング交換で直らない場合はこの大学が怪しいです。経年劣化で伸び切ったゴムシートは幾らスプリングを強くしてもOリングは押し付けられず燃料は止まりませんでした。
ダイヤフラム単品での部品設定はありませんのでコックアッシーでの交換となります
旧車用で既に販売終了の場合は他機種流用の措置をとるようになります。
マッハの様にリプレイス部品の設定がある車種も昨今は増えてきていますので、それを上手く使うのも一つの手法です。

 

フューエルコック分解時はOリング・ゴム類にシリコングリスを塗布して組みつけます