スクーター整備・ウエイトローラーの向きについて ~駆動系編

ナレッジ
スクーター整備 ~要所を解説
スクーターの駆動系整備

生産国が海外の車両が多く新車なのに組み込み違いがあります

中国生産車両に多く見られる組み間違い。すぐに問題は発生しませんが距離を重ねると壊れます。

スポンサーリンク

組み間違いの多い部分2点

  • ウエイトローラー
  • クラッチウエイトのベースプレートを固定する大型ナット

この部分は高確率で間違えて組まれています。

ウエイトローラーでプーリーの破損、ナットが緩んで異音と変速不良・・・。
危険をも伴う事ですのでしっかりと整備しましょう。

分解整備時に確認したい部分2点

   【ウエイトローラー】

【プーリーの回転方向】

ウエイトローラーの組み込みは回転方向に合わせた向きがあります。
アクセルを開けた瞬間に仕切り板とウエイトローラーは大きな衝撃を以って接触します。


 

【ウエイトローラーの向き】

画像左側は金属部が見えていますが、右側はウエイト金属・真鍮部分を樹脂が覆う様にストッパーとなっています。
この様にウエイトローラーには前後の向きがあります。


 

プーリーに正対してストッパーが「左側」に来る様に組むのが正解です。
ストッパーが無いローラーもありますが、向きがあるのに6個バラバラな方向で組まれている中国製造のホンダ車両には閉口します。

ストッパーが正しい向きに無いとウエイトローラーの消耗も早く、酷いものだとプーリー側が削れてローラーが噛み込んで変速不能にもなりますので要注意・要確認の事。

   【クラッチウエイト部分のナット】

ドリブンフェイスの頁で解説するとクラッチウエイト・ベースプレートを固定する
「15番」のナット。

 

このナットには表裏があり、向きを間違えると緩んで外れてしまう事があります。


 

 

ナットの角がとれてつるんとした丸い表面が「裏」
エッジが立ち表面が平らな方が「表」・・・、となります。

一見反対にも思えてしまいますがメーカーの整備講習会でもこの部分は間違いが多いようで
しっかりと解説されています。

ナットの脱着にはプレス機があると作業は簡単に行えますが、無い場合は万力で固定するか専用特殊工具の用意が必要です。

この大きいサイズのナットに対応した工具はこちらから


プーリーへの給油

 

実はプーリーへも注油は必要です

メンテナンスフリーと思われがちなプーリーですが、ベルト交換時に一緒に分解給油すると作動性が上がりスムーズな動力伝達となります。

パーツリストで解説すると先のナットを外し、スプリングと「13番」のスリーブを抜いて
「10番」と「11番」のピンを3箇所取るとフェイス部分は左右に分割出来ます。
必要があれば中に使われるOリングやオイルシールは交換し、古いグリスを拭き取って新しい物と入れ換えます。グリスは「モリブデン系」で良いでしょう。センターシャフト部分とスライドピンの接触する部分にしっかりとグリスを塗り、10・11番ピンにもグリスを塗布して組み込みます。


 

 

内側・ベアリング部分にも忘れずグリスを注入します。
PCXに多いのがこの内部ベアリングの不良。殆どの車両で異音が出ていますが、原因はこの中に使われるベアリングの不良です(走行での異常はでませんが)。エンジンをかけずに押して「ごおぉー」と音がする車両はこの中に使われているベアリングを交換すると直ります。

ホンダ車両ではまだ確認されていませんが、スズキ・アドレスV125等は油切れで内部の消耗が酷くなっている車両が多くなってきています。

無給油で乾ききった状態。引きずられたピンがズッコケてスリーブを押し破っています。
この状態ではプーリーが左右に開く事なく変速不良を起こします。

メーカー・排気量問わず、この部分は一度分解整備するのが望ましいです


 

 

クラッチウエイト・スプリングも折れる事がありますので要点検です。
アイドリングで車体が前に進んでしまう現象は、このスプリングが折れている独特の症状です。