【アウターシムの交換・タペット調整を実践に基づいた解説での案内です】
- オイルクーラー・ホースが上回しの場合はコア側でホースを外します。
- 個体差だったり補強パイプでの干渉等によりヘッドカバーが横に抜けない場合はキャブレターを外し後方へ外す方法となります。
- カバーを固定している6mmボルト16本を外します。
- 吸気・排気の8カ所のクリアランスをシクネスゲージにて計測。
- シムを外し使われている厚みから適正値を導き交換します。
- カバーが外れている間にカムチェーンテンショナーの調整も同時に行います。
・・・以上が作業の概要です
実際の手順ガイド
ヘッドカバーは経験上その殆どが横にずらして外す事が出来ますが、稀に上方に引っかかって後方に抜かないとならならないケースもありますので、その場合はキャブレターを外します。
(→ 補強されているとその追加パイプに干渉の場合有り)
カバーが外れたら1番シリンダー(車両に跨って左側から数える)の圧縮上死点を出します。
【圧縮上死点の合わせ方】
ポイントカバーを外して17mmレンチでクランクを回し、1・4番の「T」を
合いマークに合わせます。
車体左が横から見てカム山が外向きになっていれば正解で、内向きだと「排気上死点」となります。
この時(排気上死点)吸気・排気双方のカムは僅かにタペットを押し下げている状態です。
これは排気をスムースに行う為に吸気バルブも少し開け、新気流入の力で燃焼室に残った排気ガスを押し出す作用を狙ったものです。
画像の様にカム山(おむすび型の先端)はどちらも外に向いています。
ポイントカバーを外し『T』マークを合わせます
マニュアルではカム山をシムと反対方向に向けての隙間を測定する様に指示がありますが、
圧縮上死点での計測が原則・間違いのない方法です。
この状態で1番吸気・排気、2番排気、3番吸気の4カ所が測定可能です。
この位置からクランクシャフトを1回転させ4番での圧縮上死点を出した状態で
4番吸気・排気、2番吸気、3番排気の4カ所を計測します。
8カ所の計測をしつつ、シムの載っている「キャップ」の切り欠きを手前にセットしておきます。
これはシムを抜く時にマイナスドライバーの先端が隙間に入り易い様にする為で、スムーズに作業を行う為に必要な行為です。
工具の使い方はマニュアルに準じています
カムでタペットを押し下げた状態で工具をセットし、カムを戻すと工具に固定されたキャップは
下がったままの形になり、隙間が大きく出来たこの状態でシムが外せるという構造です。
外したシムは古いと厚みの表示が消えている物が殆どです。
マイクロゲージを用意し、しっかりと計測しましょう
シムの取り付けは隙間が狭いので要注意!
カムキャップ側にしっかりと装着できたか隅々まで確認して下さい。
うまく嵌ったら工具の逆側へカムを回して工具を外します。
クリアランスの確認と同時にカムキャップを回しシムの取り付けの再確認を忘れずに・・・
8カ所の調整が完了したらクランクを数回転させ、クリアランスの最終確認して「完成」です。
ヘッドカバーガスケット(税別4350円)とカムプラグ(税別610円)4個
これは再使用せず、高価でもカワサキ純正部品で新品にする事をお勧めします。
【タペット・シム】
シムは2.00mm~3.20mmまで「0.05mm」刻みで設定されています
【部品番号】 12037-001 2.00t 12037-002 2.05t 12037-003 2.10t ・ ・ ・ 12037-025 3.20t ~~~と、この様に部品番号が1番変わると0.05mm厚さ(t)が変わります シム価格 税別1枚800円 【パーツリスト画像】
クリアランスが仮に0.03mmで入っていたシムの厚さが2.65mmだった場合、
シム厚を2.60mmにし、クリアランスを0.08mmにします。
計算では合っていても実際に交換してみてもそうならないのが現実で、
更に0.05mm刻みの特性上、なかなかピッタリ当て嵌まらない事もしばしば・・・。
私が整備する場合、吸気側は狭い方向へもっていき、排気側は広い方向へとしています。
(→ 0.06mmか0.11mmか迷った場合は0.11mmで)
最後は「カムチェーンの張り」&「カムホルダー」の点検
【カムチェーン】
カバーを開けた時でないと目視で確認出来ませんので、ここでしっかりと見ておきましょう。
チェーンの張りの他、トップアイドラーとテンショナーのガタツキも確認。
場合によってシリンダー後方・外部にあるカムチェーンテンショナーも外しきちんと押しているかも見ます。
今回整備した車両はガイドローラーの動きが固く、カムチェーンテンショナーの張力で押し切れず
チェーンが遊んでいた状態でした(チェーンの音は出ていませんでした)。
余談ですがこのカムチェーンテンショナーは「Z1000MK2」純正の物が良く出来ていて、
強化タイプを入れるよりも信頼性も高くて、FCR等キャブレターに交換した際にも干渉せず
いい事尽くめの純正部品です。
【カムホルダー】
5割の度合いでネジ山が弱っていて規定トルク(1.2kgf/cm2)まで締め付け不可能です。
トップアイドラーと合わせて固定ボルトのトルクを確認します。
ホルダーのネジ穴は左右両端の4カ所はそのまま「リコイル加工」の作業が出来ますが、
内側の4カ所に不具合があった場合はシリンダーヘッドを降ろしての修理となります。
*****ゴムラバーの代わりに「収縮チューブ」を使います。