Z1/Z2 ~スタータークラッチの交換を解説

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Z1/Z2 ~スタータークラッチの交換

 

Z1/Z2 ~スタータークラッチ交換

「カラカラカラ~」 セルボタンを押してエンジンがかかる前に空回りする音が・・・。
この症状はスタータークラッチが滑ってしまっている可能性が高いです。
中に使われる3個のローラーとスプリングの交換だけでも飛躍的に改善されますが、今でも部品一式がメーカーから供給されていますので、部品のあるうちに・今後永く乗るのであればASSYでの交換をお勧めします。
ローラーのみでもASSYでも交換作業時間は変わりません。


 

ローターの取り外し

ローターは市販の工具で外す事が可能です

~~~よく目にする14mm、16mm、18mmが一体になっている一般的な工具です

 

前述の工具、16mmの部分を使って締め込んでいくとローターは取り外せます。
工具は「十字」になっているので底付きした所で、横方向に伸びたネジ部をプラハンで叩くだけで外す事が出来ます。殆ど開けられた事のないエンジンですと固着して、なかなか外れない車両もありますが、大体はこれで作業が進められるはずです。

スターター整備は難しい作業ではありませんがスムーズに完了させる為の要点や注意点があります。


 

    【ローター取り外し前に必ず行う作業】

それはセンターボルトを抜いた後、ローターの収まり具合・どれ位の位置深さなのかその数値を測っておくこと。
これはローターを組付けた時に最後まで押し込めているかを確認する為です。
半月キーが押され・ズレたまま固定されている車両もありましたので、こうして最初に見ておくことが重要です。

 


 

メーカーからの部品供給あり

必要交換部品は全てカワサキ純正部品で販売されています

スターターギアとクラッチASSY、純正品で揃うのはとても有難い事です。
他の記事でも書いていますが、社外品が販売されているからと言って純正部品が終わっている訳ではありません。そしてその殆どは純正部品の方が安いのも特徴です。
しっかりと調べてから注文するのが賢明です

スターターギアを始め、ワンウェイクラッチ部分、ガスケットにノックピン(ドエルピン)、センターボルトに至るまで全ての部品がいまだに販売されているのは、製造から50年以上経過している事実を踏まえて本当に凄い事だと思います。


 

スタータークラッチの分解と組み立て

ワンウェイ部分の分解と部品の正しい位置を解説しています

   【スタータークラッチの分解】

ギアはクラッチボディと擦れていて消耗度合いが分かりますが、こうなっている車両はとても多く異音の原因にもなっています。ギアだけでなくローター側に見える「銅ワッシャー」まで新しくなると、この部分は擦れ難くなりますがこの部品は残念ながら販売終了。
ギアのみでも十分良くなりますので高額品ですがしっかりと整備していくことが重要です。
(以前は15000円程度の部品でしたが、今や4万円に近い商品です)

画像に見える3本のM8ボルトを外せばローターとクラッチが分離出来ます。


 

 

新品部品との比較です。
ローラーの摩耗もありますが、滑りの一番の原因はギア側中心・ローラーの噛む部分が擦り減っているものです。
新品ではありますがギアもクラッチも一度分解して隅々洗浄し、固まっている保護油などを落としてあげるとローラーがスムーズに作動します。


 

 

ローターとクラッチASSYの間にはシムが入っています。これもローターと共に綺麗に洗浄して組み込みます。
ローターの磁力で金属粉を拾ってしまうので清掃には少々コツがありますが、なるべく汚れの無いテーブルや台、タオルの上で作業するようにします。


    【スタータークラッチの組付け】

M8ボルトには中強度のネジロックを塗布して組付けます。
部品洗浄・ローラー組込み後に、新品時に付属の白いスポンジを再使用するとローラーが固定出来て外れないので作業性良好です。


 

 

スターターギア裏側にはダンパーラバーが付きます。
クランクシャフトに取り付けの際、落ちてしまわない様に硬めのモリブデングリスで固定しておきます。

 


 

重要~2枚のワッシャー・シム

パーツリストの画が間違っている部分・部品の解説です

この2枚のワッシャーの位置や向きはとても重要です。
パーツリストでは得られない情報をここで解説しています。

 

    【ワッシャー・シムの位置関係】

まず大きい方。表面がフラットなこの1枚は、ローター側のこの位置に入ります(表裏無し)。
このワッシャー、パーツリストでの位置に間違いはありませんが、後出のワッシャーと絵が入れ替わっていてサイズが小さく描かれています。


 

 

次に小さい方。これはスターターギアの凹み部分に収まるので位置は間違い難いのですが、
これには表裏があります。

画像左側、表面がフラットな方がエンジン「外向き」になり、
画像右側、内角がテーパーになっている方がエンジン「内向き」になるのが正解です。
このワッシャーについてはパーツリスト上、場所も大きさも間違った記載になっていますので要注意。リストではスターターギア外側の位置で描かれたうえにサイズも大きくなっています。

サービスマニュアルではこのワッシャー・シムに関しては、テーパー部を内向きにと書かれています。

 

これはクランクシャフト軸・付根部分にアールがある為、逃げを作っている事によるものです。

 


 

     【シム表裏での違いを確認】

 


 

クランクシャフトへのローター取り付け方法

半月キーが動いてしまったり、向こう側が見えないので手探りでの作業になりますので、慣れていてもスムーズにいかない場合も・・・


 

エンジン側も洗浄が終わりローター組付けを待つばかりの状態です。
ローター取り付け前に、クランクシャフトを回転させ半月キーが真上に来るようにします。

先の画像ではスターターギアとクラッチASSYが分離していますが、クランクシャフトへは一体にして取り付けます。

ローラーベアリングはローター側に入れておいた方がクランクシャフトに付け易いです。
これは後述の比較動画にてご確認下さい。

 


 

     【ローラーベアリング・クランク側】

 


 

     【ローラーベアリング・ローター側】

 


 

    エンジンカバーからのオイル漏れ対策はこちら

 


 

    【各ボルトの締め付け】

ローターボルトは「2.5kg-m

スタータークラッチの3本はもう少し少なめ
「2.0kg-m」位で十分なトルクです。

双方共にネジ部にはロック剤を塗布します。
これは中強度で良いでしょう。

 

組み上がったらスターターギアを回してみて、スムーズに回転する事を確認して作業完了となります(少し抵抗がある位で正常です)。

 


 

    使用工具の参考案内