「カラカラカラ~」 セルボタンを押してエンジンがかかる前に空回りする音が・・・。
この症状はスタータークラッチが滑ってしまっている可能性が高いです。
中に使われる3個のローラーとスプリングの交換だけでも飛躍的に改善されますが、今でも部品一式がメーカーから供給されていますので、部品のあるうちに・今後永く乗るのであればASSYでの交換をお勧めします。
ローラーのみでもASSYでも交換作業時間は変わりません。
ローターは市販の工具で外す事が可能です
工具は「十字」になっているので底付きした所で、横方向に伸びたネジ部をプラハンで叩くだけで外す事が出来ます。殆ど開けられた事のないエンジンですと固着して、なかなか外れない車両もありますが、大体はこれで作業が進められるはずです。
スターター整備は難しい作業ではありませんがスムーズに完了させる為の要点や注意点があります。
【ローター取り外し前に必ず行う作業】
必要交換部品は全てカワサキ純正部品で販売されています
スターターギアを始め、ワンウェイクラッチ部分、ガスケットにノックピン(ドエルピン)、センターボルトに至るまで全ての部品がいまだに販売されているのは、製造から50年以上経過している事実を踏まえて本当に凄い事だと思います。
ワンウェイ部分の分解と部品の正しい位置を解説しています
【スタータークラッチの分解】
ギアはクラッチボディと擦れていて消耗度合いが分かりますが、こうなっている車両はとても多く異音の原因にもなっています。ギアだけでなくローター側に見える「銅ワッシャー」まで新しくなると、この部分は擦れ難くなりますがこの部品は残念ながら販売終了。
ギアのみでも十分良くなりますので高額品ですがしっかりと整備していくことが重要です。
(以前は15000円程度の部品でしたが、今や4万円に近い商品です)
画像に見える3本のM8ボルトを外せばローターとクラッチが分離出来ます。
新品部品との比較です。
ローラーの摩耗もありますが、滑りの一番の原因はギア側中心・ローラーの噛む部分が擦り減っているものです。
新品ではありますがギアもクラッチも一度分解して隅々洗浄し、固まっている保護油などを落としてあげるとローラーがスムーズに作動します。
【スタータークラッチの組付け】
M8ボルトには中強度のネジロックを塗布して組付けます。
部品洗浄・ローラー組込み後に、新品時に付属の白いスポンジを再使用するとローラーが固定出来て外れないので作業性良好です。
スターターギア裏側にはダンパーラバーが付きます。
クランクシャフトに取り付けの際、落ちてしまわない様に硬めのモリブデングリスで固定しておきます。
パーツリストの画が間違っている部分・部品の解説です
【ワッシャー・シムの位置関係】
まず大きい方。表面がフラットなこの1枚は、ローター側のこの位置に入ります(表裏無し)。
このワッシャー、パーツリストでの位置に間違いはありませんが、後出のワッシャーと絵が入れ替わっていてサイズが小さく描かれています。
次に小さい方。これはスターターギアの凹み部分に収まるので位置は間違い難いのですが、
これには表裏があります。
画像左側、表面がフラットな方がエンジン「外向き」になり、
画像右側、内角がテーパーになっている方がエンジン「内向き」になるのが正解です。
このワッシャーについてはパーツリスト上、場所も大きさも間違った記載になっていますので要注意。リストではスターターギア外側の位置で描かれたうえにサイズも大きくなっています。
サービスマニュアルではこのワッシャー・シムに関しては、テーパー部を内向きにと書かれています。
【シム表裏での違いを確認】
半月キーが動いてしまったり、向こう側が見えないので手探りでの作業になりますので、慣れていてもスムーズにいかない場合も・・・
エンジン側も洗浄が終わりローター組付けを待つばかりの状態です。
ローター取り付け前に、クランクシャフトを回転させ半月キーが真上に来るようにします。
ローラーベアリングはローター側に入れておいた方がクランクシャフトに付け易いです。
これは後述の比較動画にてご確認下さい。
【ローラーベアリング・クランク側】
【ローラーベアリング・ローター側】
エンジンカバーからのオイル漏れ対策はこちら
【各ボルトの締め付け】
組み上がったらスターターギアを回してみて、スムーズに回転する事を確認して作業完了となります(少し抵抗がある位で正常です)。
使用工具の参考案内