Z1/Z2-W3 ~ダブルディスク用・5/8インチマスターシリンダー

W3
Z1/Z2・W3の『5/8マスターシリンダー』~整備編

 

W3純正 5/8サイズ ダブルディスク用マスターシリンダーについて解説

日々高値更新の「W3用」マスターシリンダー。
Z1/Z2のダブルディスク用に使用される為、年々高額になってきている状況ですが
それと同時に良品が無くなってきているのも事実。

ここでは修理・整備と再生方法までを解説していきます

 


 

ダブルディスク用・5/8マスターのそれぞれ

同じ純正品でも年式違いで形状が違います


    【 W3純正部品の5/8マスター 】

 

純正オプションの「5/8」刻印入りはW3と同じ物で、
その他ダブルディスク化された’75~’76年(A4・A5)のZ2用の物があります。
これには刻印が無く一見シングル用に見えてしまいますが、レバー側から確認するとピストン径が大きいのが判別出来ます。
→ ’77年のD1ではリザーブタンクが樹脂製に変更となっています。


 

Z2純正オプション・W3用のマスターシリンダーです。
ブレーキレバーピボット部分に「5/8」の刻印が見て取れます。


 

 

刻印なし。
シングルディスク用「1/2」サイズ。

 


 

75年~76年の「A4・A5」用。
刻印なし。
リザーブタンク容量が増えたもの。
表面の縦筋ラインがなくなり、のっぺりとした外観。
映画「彼のオートバイ彼女の島」DVDジャケットのW3にはこれが付いています。

 

 

こうして並べてみるとフルード容量を増やす為に、リザーブタンクが縦長になっているのが確認できます。


購入したマスターシリンダー不具合の症状について

ヤフオク、メルカリなど個人売買で購入し、取り付けに持ち込まれる多くのマスターシリンダー


      【不具合の多い部分】

タンク内を覗くと穴が二つ。
画像内・左側は液圧をかける部屋、ピストンの「プライマリーカップ」側で、
右側は液溜まりの部屋「セカンダリーカップ」になります。

 

この穴が腐食で塞がっている物が多く見られ、その為にエア抜きが完了出来ずにレバーに抵抗が無かったり、エアが抜けた状態ではあってもブレーキの引き摺りを起こす等、不具合の症状は様々です。
見落としがちなのと合わせて、作業中に分かり難い部分でもありますので、入手後は必ず貫通しているかの確認が必須です。

 


 

塞がった穴の修正方法

アルミ錆による閉塞ですのでアルミクリーナーと極細のワイヤー線での作業となります

 

 

    【ワイヤー線とアルミクリーナー】

まずはワイヤー線にて探ります。
右側は貫通、そして左側は・・・。
塞がっています。
アルミクリーナーをスポイト、若しくは綿棒で1滴ほどの量を塞がった部分に湿らせ、5分程度置いておきます。

 


 

 

軽くつついてから洗浄→クリーナーを1滴・5分置く→ワイヤー線でつつく・・・。
この作業を繰り返し行う事でやがて穴は貫通します。

因みにこの左側の穴が塞がっていると、エアは抜けるしブレーキレバーも正常。
ブレーキもかかりますが、キャリパーピストンが戻らずブレーキの引き摺りを起こします。

 

    アルミクリーナーは液体が使いやすくお勧めです

 

 


 

スロージェットの穴詰まりにも使える「ワイヤー線」

意外に知られていない曲がりに強く極細のワイヤー線とは・・・

知っておくと様々な場面で本当に重宝する便利品です。

 

【ステンレス製のワイヤー線】

先の作業で使用のワイヤー線。これ実は・・・ワイヤーブラシの「毛」です。
ブラシ用ですので固く曲がりにくいので、穴通し作業にはもってこいの素材です。
しかもステンレスなので錆び難く、貫通した穴の内壁を汚さない優れもの。
ラジオペンチで1本掴み引き抜いてから、真っすぐに修正して使います。


 

 

ノギスでの測定値になりますが「0.35~0.375mm」と言った線径でしょうか。
これならばキャブレターOH時に、番手の小さいスロージェット・パイロットジェットの穴詰まりに対しても、キャブレタークリーナーと併用して使用可能です(はるか以前より実際にそうして整備に使用してきました)。
穴詰まりのみならず、エアスクリュー先端に使われる小さな「Oリング」の取り出しにも重宝します。ワイヤー線先端を釣り針の如く曲げ、スクリュー穴の奥にくっついてしまっているOリングを引っ掛けて引き上げます。固着している時はスプレーノズルや精密ドライバーにて先に剝がしてから引き抜きます。


 

 

前述の「スプレーノズル」ですが、これも使用後に取っておくと何かと便利です。
メインジェットの詰まり以外にも度々活躍します。
先端を潰して成形してあげれば、ブレーキキャリパーOH時の汚れ落とし道具にも早変わりです。

 

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