モリワキより説明の無い不調の原因を解明・解説していきます。
定番のヨシムラカムもここで紹介しています。
既に廃番 Z1/Z2用モリワキカムシャフト・ステージ1
Z1/Z2 モリワキハイカム・ステージ1~交換後のコンプレッション
15年前にいよいよ再販・復活した往年の「モリワキカムシャフト」。一般道用とサーキットオンリーを考えてステージ1&2での復刻でした。モリワキモンスターに憧れた世代からの指示が大きいモリワキの製品は今現在でも人気の的です。2本リングの998ccピストンと共に組み込めば気分はワインガードナーと言ったところでしょうか。もちろんマフラーは「モリワキモナカ」で・・・。
モリワキ・カムの問題点
発売後すぐに取り付けた感想は・・・。 それ以前になんとコンプレッション・圧縮が上がってきません(コンプレッションゲージにて計測、5~6.0kg/㎠)。付属の取説には1mmリフト時の角度とタペットクリアランスのみの表示。 タペット調整後(指定は冷間時、吸気・排気共に純正カムと同じ0.05~0.10mm)にバルブタイミングも調整(カムスプロケットを長穴加工)。 しかし圧縮は上がらず他に原因があるのかとエンジン腰上を幾度となく分解・点検しますが進展なし。
~~~思いつくまま広く取ったバルブクリアランスは指定された値よりも大きく実測「0.30mm」。これでエンジンを回すとこれが「16.0kg/㎠」まで一気に上昇! そうです、オーバーラップの関係でタペット隙間を大きく取らないと気密がしっかりと保てない設計なのでした。 これに気付く迄いったいどれほどの時間をかけてきたのでしょう。
詳細報告をモリワキ側に伝えると説明がつかない様子で議論にもならず話は終わりました。このまま使ってもタペットが詰まると当然圧縮は下がる事と思い取り外してしまいました(性能維持の為こまめにタペット調整と言うのもランニングコストがかかりすぎです)。 それと引き換えになる程の性能が秘められているのかと思い取り外す前に検証程度試乗してみましたが低速は力なく、そうかといって高回転まで回してもなだらかすぎるパワーカーブで面白みのない物でした(トルクもパワーもないもっさりとしたカムです)。これならばノーマル・純正カムの方が低速からトルクがあって乗り易く、回転を上げてもノーマルの方が遥かに使い易く「Z」の良さが全面に押し出されているなと感じられました。
絶対的な性能のハイカムは「ヨシムラ」製品
ヨシムラはカムプロフィールのデータ表記が充実
以前ヤマハ「SR」用カムは自社内で加工・製作されていましたので(ブランク材は外注)、四気筒用カムももしかしたら同様に自社製作品かも知れません。ヨシムラカムは同じステージ1でも1mmリフトのクランク角だけでなく、ロブセンターでの設定値も表記がありました。ロブセンター合わせは「不感帯」と呼ばれるバルブが押されも戻りもしない空白の部分があり調整には少々コツが必要ですが1mmリフト時と合わせて調整すると正確な位置に合わせられ、計算上どちらから合わせても最後はピッタリ同じになるはずです。バルブの動かない角度の半分の位置で合わせても1mmリフトのクランク角度はほぼピッタリきます。タペットも指定の「0.20mm」の他、純正指定の0.10mm、そして標準値を超えた0.30mmと変えて圧縮を測っても変わる事はありませんでした(これが普通なのですが)。
乗ってみてもそれは秀逸な物で低回転から力強く、高回転まで気持ちよくスムーズに回っていく素晴らしい物です。「ハイカムにすると下が無くなる」と言われ続けた事は既に都市伝説化。ボアアップ併用無しでパワフルに使い易いこの製品は素晴らしく、定番商品とはきっとそういった経緯からくる信頼性なのでしょう。
~~~ヨシムラのカムは純正カムと比べてリフト量が大きく設定されています。
ヨシムラ・カムの注意点
同じZ1/Z2でも年式によって個体差があり、リフト量の増えたカムシャフトでは先端部分がシム手前部分・ヘッド内側に干渉して回らなくなる物があります(稀に干渉しない物有り)。ですのでヘッド単体の状態でこの部分を削っておく作業が必要になります。ヘッドが載った状態で削るとなるとエンジン内部に切粉が多大に入ってしまいます。でもこれは絶対に避けたいところですのでカムを載せて確認し、当たる場合は速やかにヘッドを降ろして作業する事を推奨します。
ポン付けでも性能はしっかりと出ますが、バルブタイミングを合わせる事により本来持っている性能がフルに引き出される事は間違いありません。カムスプロケット穴の長穴加工から道具(ダイアルゲージなど)の準備。必要な事は多々ありますがあくまでも趣味の世界ですので面倒と思わず全てを楽しんで作業が出来るときっと素晴らしい車両が完成すると思います。
バルブタイミング概要
~~~まず正確な圧縮上死点に合わせる為プラグホールからピストンにダイアルゲージを当てます。クランク角度にして5度ほどダイアルゲージの針が振れない不感帯が出てきますが、その中間地点を上死点としてこれを「0地点」とします。
~~~ジェネレターカバーのボルト穴を使ってピアノ線を取り付け、クランクシャフトに固定した360度分度器の「0度」に合わせます。ここには物が触れない様に注意しながら作業を進めます。指定された角度に合っていない場合は長穴加工されたカムスプロケットのボルトを緩めて調整すると言うシンプルな物です。クランクを回転させる時に問題が発生しない様に分度器はジェネレター側に取り付け、回転作業は右側・ガバナー側に工具を当てて回すようにします。