旧車整備の基本①~燃料タンクのサビ取り剤とコーティング剤について解説

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各種タンクコーティング剤と錆落としについて
フューエルタンクの錆落としとコーティングの基本

旧車整備に欠かせない代表的なメニューがフューエルタンク・燃料タンクの錆落としです。
錆落としするとそのままコーティングされて錆が出ないと謳われている製品が幾つかありますが、実車両にて検証すると実際には早いと数か月で錆は再発してきます(季節や使用環境によって変わります)。
梅雨時期に行った検査ではそれぞれ錆取りコーティングした試験片を風雨にさらして検証した事もありますが、この実験では酷いと翌日には赤く変色・錆の発生が認められました。


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錆落としとコーティングはそれぞれに行う

ここではPOR-15タンクシーラー、WAKO’Sタンクライナー、KREEMの3種類を挙げています。
3製品全て使ってその後の経過を10年以上見てきたそれぞれの良い点・悪い点の解説です。

POR-15とKREEMは「1液タイプ」、WAKO’Sタンクライナーは「2液タイプ」です


【POR-15】

酸化重合型に近く、空気中の酸素・水分に反応して硬化します。そのため厚くなった部分は固まるのに時間がかかります。
この製品はとても使いやすく、サビ取り液とのセットもあります。そのサビ取り液も秀逸で、WAKO’Sの「ピカタン」よりも強力。但しピカタンと違い再使用は不可

原液1本をタンクに入れたらお湯を口いっぱいまで注いで12~24時間おけばOK。
錆取り剤を抜いてからの内部洗浄は高圧洗浄機の使用が理想的ですが、それが無い場合は
液を抜いた後少し強い洗車用ノズルで水流をあてて洗浄すると良いでしょう。
コーティング剤の方は1液タイプなのですぐには硬化しません。
1液の特性上比較的流動性が高い性質と相まり硬化の始まるまでの時間に余裕があります。
その事から複雑な形状のタンクでも隅々行き渡らせるのに多少時間がかかっても大丈夫ですので、
コーティングを初めて行う方・初心者の方でも作業がしやすいです。
しっかりとした作業(サビと水分の除去)を前提で、耐用年数は永く10年以上はゆうに持ちます。
色はシルバーです。また、作業しなおすのにシンナー系では溶けません。
皮膜は強くサビの発生を抑えてくれますし、タンクが少々凹んでも剥れません。
もともとはジェットスキーや船外機のタンク用に開発された製品です。

乗らない期間・放置時間が2年以上経過すると傷んだガソリンの作用でコーティングは腐食して剥がれ落ちるので注意が必要。長期間使わない場合は燃料を必ず抜く事。

【KREEM】
POR-15が発売されるまでは、これしかなかったのでそれまではこれを頻繁に使用していました。
1年程で白い皮膜は燃料によって赤く変色、完璧にサビを落とさないとすぐに剥れてきます。
他店で行ったのかオーナー自ら行ったのかは定かではありませんが、以前修理で入庫した車両で
半分以上ガソリンが入っているにも拘らずガス欠になるという症状がでた事があります。
これはこの「KREEM」の被膜が剥れた事によってタンク内が二つの部屋に分断されてしまい
燃料コックからガソリン供給が半分しかされなかった事によって発生したトラブルです。
完全にサビを除去しても耐用年数は短かく、作業をし直すのにウレタンシンナーで溶かせます。
コーティング皮膜は弱く剥れやすく、タンクが少量でも凹むとアウトです。
これが過去に使われていて今現在錆が再発生して(コーティング剤の腐食・剥がれ)、
修理対象となっている車両が多くなってきています。

初めて使ったのが25年以上前の事ですが、どんなにしっかりと施工しても10年使えた車両・タンクは稀でした。
コーティング剤は若干のモデルチェンジがありましたが当時と性能の差はあまり感じられません。

 


【WAKO’S タンクライナー】
2液タイプ。硬化剤で反応・硬化する製品です。
今まで使った中では数ランク上というよりも現在これを上回る物はありません。
塗膜も厚くサビを抑える力も強力。タンクが凹んでも剥れ難い性質を持っています。
硬化剤を使用しますので反応時間を考えると初心者には取り扱いが少々難しいかもしれません。
主剤と硬化剤の調合は目盛りのついた容器が付属しますので2種の各々の計量は容易です。
混ぜムラによって硬化が不完全になりますので3~5分しっかりと混ぜ合わせます。
発売以前にメーカー様からサンプルを頂き製品レポートの要請を受けましたが、
その時に施工した車両・タンクが未だ問題なく使えています。
発売が2005年前後と記憶していますので、これはかなりの耐久性能と思われます。
厚塗りが可能なのとあらゆる溶剤に対しての耐久性があるので作業しなおす場合、
剥離剤で根気良くやるか、またはタンクごと燃さないと落とせません。

 

主剤を棒で良く撹拌してから硬化剤と混ぜ合わせます(底面に顔料が溜まっている為)。
コーティングとしての役割を考えると、なるべく空気を含めないように混ぜるのが正解です。

 

 


サビ落としについて

サビ落しと同時にサビの発生を抑える性能を持ち合わせた商品があります。

タケドンや、はなさかG、WAKO’Sピカタン、etc・・・。
一度の作業で錆取りとコーティングの2工程完了出来ますので簡単・便利です。
・・・しかし、どれも必ず短い期間でサビは発生します。
ですのでどれを使うにしても、それと同時にコーティング剤も併用しないと二度手間になります。

錆落としを検索すると、出費を抑えてサンポールの類を使うのを見かけますがこれは最悪です。
強すぎてサビの出ていない部分まで犯してしまいますし、
なんといってもよくよく洗浄しても、逆にサビがでやすくなってしまいます。
こんな情報を見て聞いて作業してしまうとせっかくの修理が台無しになってしまいますので
書き手も自己判断でとせずもう少し成分まで勉強してから記事を書くべき事と強く思います。
販売店でもコストダウンの為に行っている様子を伺うと本当に残念です。

WAKO’S製品はエコロジーを考えているので、
廃棄するのに環境汚染にならないように作られています。
ですので若干落ちは悪いですが、2回行えば完全に除去出来ます。
とにかく短時間で完璧にという方には、POR-15シリーズのサビ落しが良いでしょう。

 

 


穴の開いたタンクの修復

WAKO’S、POR-15、KREEM、コーティング剤のどれも穴の開いたタンクの修正が出来ます

穴の外側からアルミテープを貼り付け、その部分に
コーティング剤が溜まるようにタンクを固定してあげればOK。
完全硬化後に漏れることはありません。特にWAKO’S製品は
硬化剤を使用しますので、膜が厚くなっても問題ありません。
KREEMの場合は、日向に置いての自然乾燥を10日~2週間程要します。

POR-15のセットには繊維質のシートが付属しますので、上記の作業にプラスして
コーティング剤を染み込ませた繊維シートを穴の開いた部分に貼り付ける様にすると
完全に穴を塞ぐことが出来ますし、腐食している部分の強度も上がります。

穴の開いたタンクの修理は今現在このシート+WAKO’S製品で行っています。