バリオス・ZRX400、特にこの2種に多く見られる症状です
どちらも同じ症状が出やすく両車両での修理依頼が多くなってきています。
バリオス・ZRX400 ~エンジンがかからない症状
その症状も出たり出なかったりと言う不規則なもの
「エンジンかからない病」とはエンジンを止めた後の再始動の際に、セルは元気に回っているのにエンジンがかからない症状を指しますが、この時10~15分程時間をおいてから再始動を試みるとエンジンは普段通りにかかります。
毎回エンジンが暖まる頃に吹けが悪くなったり回転が落ちてエンスト・・・。
といったケースは単にイグニッションコイルの不良であったりしますが普段調子良く、症状も出たり出なかったり。街乗りでは発生しないけれど200km程度の距離を走ると出てしまう等、様々な形で起こります。
エンジンがかからないその原因とは?
結論から言うと原因不明で完全には直りません
メーカーに確認をとってみても原因の特定が出来ず良い回答は得られませんでした。
バリオスは早いと2万キロに満たない走行距離でこの不具合は発生していますし、排気量の大きいZRXでも3万キロを超えると症状が出てくる様子です。
更には涼しい季節には発生せず夏場に起こりやすいと言うケースもあります。
飛んでいない場合はイグナイターやプラグキャップを含めたイグニッションコイル周辺の不具合等が考えられますが、この症状を追っていくと燃料系から点火系迄問題が無い状態でエンジンがかからないのが特徴です。
タンクのサビ取り・コーティング、キャブレターOH&構成部品の交換、電装系の交換。
以上の作業全てを行っても直らなかった車体がありますので原因はもっと他にあるようです。
バリオスに於いてはキャブレターを外すと吸気ポート内はかなり湿った状態なのを多く確認しています。
改善策としての修理方法
無暗な部品交換は避け要点を押さえた修理で改善させる
キャブレター構成部品を全て交換しますと部品代で10万円弱、電装系もひとつが万単位でかかってきますのでその修理負担は大きくなります。不具合の兆候がみられない時はアイドリングが安定していてエンジン回転もスムーズに上昇するのであれば、それら高額な部品の交換はしなくともこれから解説する改善方法の実践で良いでしょう。
【バリオスの場合】
これから紹介する作業は、タンクキャップのエア抜き部分の点検、キャブレターの分解・洗浄、燃料タンクのサビ取り・洗浄・コーティング、イグニッションコイルが正常な事が前提の作業となります。
- キャブレター内・フロートバルブのOリング若しくはフロートバルブセットの交換
- キャブレター調整(パイロットスクリュー、フロートレベル、アイドリング回転数)
- フューエルコックの交換
- プラグキャップとプラグコードの交換
- タペット調整
1のフロートバルブについて
フロートバルブ廻りが劣化してくると燃料供給量が増えて濃い状態になったりします。
保管状態でもタンクからの圧で押された燃料はオーバーフロー気味になってシリンダー内へとガソリンが送られて、同じように濃い状態となって調子を崩します。最低でもOリング交換、バルブ先端が段になっていれば必ずセットで交換します。Oリング単体でのメーカー設定はありませんが、当サイトで販売しています。
2のキャブレター調整について
ポート内が湿った状態が多いこの車両。おそらくエンジン内の圧縮が多少でも落ちると、不完全燃焼の症状となり吹き返しが多くなるのだと思われます。ですので標準戻し回転数の「1回転・1/4」から半回転~1回転多く戻した範囲での調整を行い、供給燃料を若干薄めの設定に変更してやります。実際に半回転多く戻して回転が上昇・調子の上がった車両も多いです。
キャブレターを分解しないとなりませんが燃料供給を安定させるため、フロートレベルは必ず調整します。マニュアルでは「13mm、誤差2mm」となっていますが、レベルが高いと送られる燃料が増える傾向がありますので若干低めの「14mm」で合わせています。
3の燃料コックについて
前述の燃料供給の安定化の為にも重要な部品です。過去に同じカワサキの大型車両でコックの負圧が利かなくなり、カブった状態で吹け上がらなくなり走行不能になったものがありました。
キャブレター側のフロートバルブがしっかりと機能していてもコックに不具合がると送られる燃料が増大し調子を崩します。構成部品のひとつダイヤフラムは部品の設定がありませんのでASSY・アッセンブリーでの交換が必要です。
4のプラグキャップについて
水冷エンジンに使われるプラグキャップは湿気に弱く見た目が良くても内部的に劣化しているものが殆どです。これも永い目で見ると消耗品の一部です。プラグコードと共に交換しましょう。
プラグコードはメーカーからの部品設定がありませんが当サイトでの販売があります。
お問い合わせはコチラからどうぞ
5のタペット調整について
タペット調整・バルブクリアランスの設定を変更します。クリアランス・隙間をメーカー指定最大値よりも僅かに広くとることによって、カムのリフト量が微妙に減るので燃焼室に送られるガスも当然減少。ガソリンの全ての供給量を規定値内で最少に設定しなおして燃焼の安定を図ります。
指定バルブクリアランス「0.15mm~0.24mm」ですので0.25mmを目標に調整します。
バリオスは「タペット・シム」を使っていますのでシム交換での調整です。そのため0,05mm刻みの厚さでの調整になり誤差の範囲も0.05mmとなります。
この作業は高額になりますが販売店に依頼する事を推奨します。
【ZRX400の場合】
こちらもタンクキャップのエア抜き部分の点検、キャブレターの分解・洗浄、燃料タンクのサビ取り・洗浄・コーティング、イグニッションコイルが正常な事が前提の作業となります。
- キャブレター内、フロートバルブの交換
- キャブレター調整
- フューエルコックの交換
- プラグキャップとプラグコードの交換
- メインスイッチの交換
1~4まではバリオスと共通の内容です
ただしフロートバルブ部分はバルブシートがキャブレターボディと一体となっており交換は出来ません。ですのでフロートバルブ単体での交換作業となります。
・パイロットスクリュー・戻し回転数: 2回転戻し(2回転半~3回転の範囲で調整)
・フロートレベル・フロート高さ : 17mm・誤差2mm (18mmに設定)
・アイドリング回転数 : 1250~1350rpm (1350rpmに)
・バルブクリアランス(mm) : EX 0.20~0.29 IN 0.10~0.19 (0.3と0.2に)
(注)カッコ内が調整用数値です
5のメインスイッチについて
これはほんの一部での修理解決に至った例ですが、ZRX400のメインスイッチ内には盗難抑止用の回路が組み込まれています。近年標準装備の「イモビライザー」とは違いますが、セキュリティ関係に「ダイオード」が使われています。どうやらこれが時々悪さをする様でメインスイッチをASSYで交換して直った車両が数台あります。
現在これらに加えて燃焼室のクリーニングでエンジン圧縮を回復させ、始動性を高めて不具合発生を抑止しようと言う試みを行っている最中です。これは燃料添加剤によるもので燃料通路の全てをクリーンにするものです。燃焼室に溜まったカーボンも時間を掛けて徐々に溶かしていくもので、現在販売されている同様の商品群の中でも突出した性能を持つ製品を使って経過観察をしています。