リヤブレーキのオーバーホール ~マジェスティ250編

【ま~も】
マジェスティ250 リヤブレーキ分解・OH
マジェスティ250のリヤブレーキ・キャリパーOH

マジェスティ250型式「SG20J」を題材にオーバーホール詳細を解説しています

ホンダと違いリヤキャリパーがサイドブレーキ兼用になった構造です。
ホンダはリヤブレーキ用とサイドブレーキ用のキャリパーが別途になっていて各々独立した構造です。

ヤマハ・マジェスティはリヤブレーキのピストンの動きが悪い場合は「シールキット」の交換で対応出来る様になっていますが、サイドブレーキ部分が不良の場合はリペア用部品の設定はありません
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リヤブレーキ整備はアッセンブリー/ASSYでの交換が前提

前述の様にマジェスティのサイドブレーキ部分に不具合が出た時は分解整備はありません。その場合メーカーからはキャリパー丸ごとの交換とされています。
今回はそれを踏まえた上での分解整備を解説しています。
作業前にお知らせ致しますが、非常に高度な技術と知識、そして様々な工具が必要になりますので個人レベルでの整備ではありません
DIYとして挑戦する際は予め新品交換を視野に入れてから作業して下さい。

サイドブレーキの不具合の原因

キャリパー側、プッシュロッド部分の腐食による固着が主な原因です

分解して錆を落としてグリスアップ、言葉にするとこれだけで良いのですが実際には分解してしまうと組み立てが非常に困難なものでした。

マジェスティのサイドブレーキはリヤキャリパー内のピストンを押し込む構造になっています。
調整用のロッド部分が腐食して動きが悪くなりますので、通勤などで頻繁にそして雨天も走行する場合はこまめにブーツをめくってグリスを注入するのが理想的です。


固着原因の調整ロッドは金ブラシで錆を落とす

~~~分解したら脱脂洗浄し、柔らかい真鍮のブラシを使って錆を落とします

リヤブレーキキャリパーの分解と組み立て

本来ここは「非分解」な部分です

分解にあたって特に難しい事はなく特殊工具も必要ありません。
厄介なのは組み立て時にキャリパー底部に入っているシール用の「Oリング」の取り付けが困難になる事です

分解はサークリップ・プライヤーがあれば容易に行えます。

 

ブレーキ・ピストン奥の非分解部分を取り出すとこれだけの部品で構成されています。
ベアリングやプッシュロッド、Oリングが入っています。

一番奥のOリングは漏れ防止用ですので穴よりも大きく収まりが悪いです。更に一番底部に開いた穴に入れないとなりませんので手が届かず始末が悪いのです。

 このOリングが仮に上手く挿入出来たとしても第二の難関、スプリングのテンションが効いた部品を押し込みながらの固定用サークリップを嵌め込む作業。これは手が4本欲しくなる程ですのでその代わりにプレスを使って押さえながら組み込む事になります。


 

 

ベアリング部分には合いマークがあります。このマークがキャリパーの上に向くようにして組み込みます。


 

 

組み立ては先ずOリングを真ん中に置きます(凹み穴に収まらない状態で良い)。
先の合いマークに気を付けてベアリングを入れます。最後に調整用のプッシュロッドを入れ、キャリパー外側に先端部を出します。
Oリングとベアリングにはブレーキ用シリコングリスを塗布して組付けます


 

 

内側から押し出しながらプッシュロッドを外側で固定します。
カラーと数種類のワッシャーを使って引き出したままの状態を保持し、ロッド先端部に開いたネジ部を使いM6ボルト・ナットで固定します。
手先の間隔で探りながら内側からロッドを押し込んでいくとOリングが深穴に嵌り込む感触が分かります(その為にも滑りを良くするのにグリス塗布は欠かせません)。穴に嵌っていないとロッドが最後まで押し込めずキャリパーの外に出きっていない状態になって、そうなるとワイヤーの掛かるアームが固定出来ない事になります。
この形態が出来上がったらいよいよサークリップでスプリング部品の固定作業に移ります。


第二の難関・インナーパーツをサークリップで固定

全体画像に写っていない部品、これがキャリパーピストン奥の非分解部分です。
センターを合わせるプレート、キャリパーピストンがねじ込まれるインナーロッド、それの蓋の役目をする段差の付いた穴開きカバー、そして適度な「張り」を保つためのスプリングと固定用のサークリップの合計5点。

~~~センタープレートには上下判別用の「合いマーク」があるので要注意。
   画像ではスプリングは穴の開いたカバー内に入っています。


 

 

まずこのプレートの「合いマーク」がキャリパーの上を向く様にセットします。

 

 

 

キャリパーピストンが固定されるネジ形状のインナーロッドを中に立てます。
これはプレートの横長の穴に収まる形状です。

 

ブレーキ・パッド裏に使うパッドグリスをプッシュロッドとの当たり面に塗布します。
パッドグリスは固いので接着剤の役割になりキャリパー内で倒れず直立するので作業性が向上します。

 

大きく穴の開いたシルクハットの様なこのカバーをインナーロッドに被せてキャリパー内にサークリップで固定します。
画像にはありませんが、カバー内にスプリングをセットしてからインナーロッドに被せます。

 

 

 


プレスを使ってスプリングの利いたインナーパーツを押し込んだまま固定

穴開きカバー上部のサイズに丁度良いソケットを使って、プレスにてインナーパーツを押し込んで固定します。
そしてこの状態を保持しながらサークリップを中の溝に嵌め込んで完成です。

 

奥溝用ロングタイプのプライヤーがあると作業がはかどります。
手持ちがない場合この様にピックセットや極細マイナスドライバー等を駆使してクリップを縮めながら溝に収めます。

 

上から中を覗くとこの様になっています。
中でバネのテンションが掛かっているので人力でそれを抑えながらのクリップ挿入はかなり無理がある作業です。
この様にプレスで固定させないと難しい工程です。

 

 


クリップをセットして組み立ては完了

組み込みが終わると画像の様にネジの付いたロッドがキャリパー中央に垂直に立つ様な形状になります。雌ネジの切られたキャリパーピストンがここにセットされます。
通常のピストンと違い、ネジの付いたピストンは当然の事ながらブレーキを掛けると回転しながら押し出されます。
ブレーキパッド交換の時にはピストンを押し込みますが、この構造の物はピストンを回転させて押し込むのが正解です。

押し込み型か回転型か、判別し易い様にピストン表面には溝があります。

ピストン外側とネジ部分にブレーキ用・シリコングリスを塗布して組み込みます。

前述したピストンの「溝」部分を工具で挟み回転させるとピストンは押し込む事が出来ます。

注意すべき点はピストンに溝がある物は全て回転させて押し込む構造と言う事です

ゴムブーツ内に耐水性の高いグリスを注入してプッシュロッドに被せます。
ワイヤーの付くアームを取り付けたらこれで本当の完成となります。


リヤブレーキ整備について

ここまで解説・説明してきましたが、非分解の理由は作業してみて分かる事が多いです。
シールの役目をする「Oリング」ですが、見るとこれはかなり特殊な大きさですので破損させてしまうと耐ブレーキフルード性で該当する物は探せないでしょう。
インナーパーツも同じで薄いプレートを曲げたり潰してしまうと部品設定がありませんのでそこでゲームオーバーとなります。

ここでの解説はあくまでも参考程度にして、分解はせずに時間を掛けて外部からの潤滑剤注入でしのげればそれが一番の対処方法だと思います。