W1-W3 ~MIKUNI/ミクニVM30 社外キャブレターの取り付けと調整を解説

W3
W1-W3 ~VM30の取り付けについて

 

W1-W3用社外キャブレター ミクニVM30

旧車対応の強い味方ですが、取付に加工が必要な場合があります。
怠るとキャブレター性能が発揮できず調子が悪くなることも・・・。
ここでは重要部分の加工方法と同調作業を解説しています。


 

ミクニVM30をW3にそのまま取り付けてみると・・・

取付けに問題はありませんが、VM30へ交換するとワイヤーの遊びが無くなることがあります

 


遊びが取れない →キャブレターピストンが完全に底に付いていない状態

アクセルワイヤーの遊びが取れないと、アイドリングが高いままであったり
キャブレターの同調もしっかりと合わせられない事態になります。

 

 

アイドルスクリューを最大限に緩めた状態において、キャブレターのトップスクリューの
調整だけでは解消されない場合も多く、キャブ側を加工して対処します

 


 

MIKUNI/ミクニVM30 ~アクセルワイヤーの調整

ここでは加工方法を含めた調整の仕方を解説していきます

キャブレター横に配置される「アイドルスクリュー」を外れない程度まで緩めてから
遊びを確認、そして不良の場合には各作業開始となります

*アイドルスクリュー →スロットルストップスクリューと同義語


 【アクセルワイヤーの遊び調整方法】  スイッチBOX~分岐間
                                                      W1-W3のアクセルワイヤーは1本→2本と途中で分岐しています。
引き側のみの設定で戻し側は無く、2気筒ですので中間から左右に枝分かれした仕様になっています。

 

アクセルホルダーから分岐ボックスまでの遊びが取れない場合、スイッチボックスにネジ山を2山残した程度まで潜らす事で解消可能です。

ここで注意すべき点は、固定ナットをキツく締め込まない事です

 

アクセルワイヤー固定ナット部分は特に緩みやすい部分ではありませんので、2山しかないネジ山をなめさせて、壊さない様に気を付けます。

ここまでは特に問題なく作業が出来ると思いますが、分岐~キャブレター間については
キャブレター部品の加工が必要となります。

 



 【アクセルワイヤーの遊び調整方法】  分岐~キャブレター間
                                                         ワイヤーに遊びがとれない一番の理由はキャブレター側にあり、
ピストンが一番下まで下がりきっていない事が原因です。

真鍮製のワイヤーホルダーの深さを測定。
ホルダーを外し実際の隙間を測り、その差を見る限りではワイヤーは僅かに引かれた状態、
ピストンが上がった状態である事が分かります。

この状態ではアイドリング調整もままならず、パイロット調整にも支障が出てきます

*アイドルスクリューは完全に緩めた状態(ピストンから離れた状態)での確認・作業となります

 


 

 

キャブレター側の加工部分と加工方法

トップカバーに付いたワイヤー調整用のスクリューを掘り下げ
それでも足りない場合にはキャップの頭頂部を削ります


   【トップスクリューの加工】

真鍮製ですのでかなり柔らかい素材です。
ボール盤やハンドドリルを使わずともドリルの刃を持って押し付け・回転させるだけで
ある程度の深さで切削可能です。


 

    【トップキャップの加工方法】

スクリューを外してみると、段差が付いているのが確認出来ます。
この「一段目」を削り落としてワイヤーに遊びを持たせます。
トップキャップ側・雌ネジ部分の深さには十分余裕がありますので、
この数ミリを削り取っても全く問題はありません。


 

 

削る手法としましては、ここではサンダーでの粗削りの後、ベルトサンダーで仕上げています。
電動工具が無い場合には、「目」のしっかりとした金ヤスリで充分に作業可能です。
水平を保つ事が最重要となりますので、焦らずゆっくりと時間を掛けての作業が好ましいです。

 

 

1台あると他での作業もスムーズに行える卓上式ベルトサンダーです

 


 

キャブレターの同調~調整

ワイヤーに遊びが出来たら左右のキャブレターを同期させる作業に移ります

 


 

アクセルワイヤーは微妙で引っ張られていても良くありませんし、余裕を持たせたつもりが「たわみ」によってインナーケーブルが引かれた状態となり、これも遊びがとれなくなる原因となります。

 

 

動画を基に再確認そして、この状態からキャブレター調整を始める様に心がけてください。

 


 


   【キャブレターの同調】
                                                            2個のキャブレター・ピストンが同時に開く様にするための作業で、
オートバイの調子を左右するとても重要な調整になります。

手順としては、アイドルスクリューが外れない程度に緩めた状態で、アクセルワイヤー・調整スクリュー部分の遊びが「0」になる位置で固定します(左右)。

アクセルを幾度か回転させてピストンが戻った時の音を聞き、同時に着座しているかを確認します。同時であれば「タン、タン、タン・・・」と、二つの音が重なった音のイメージ。
合っていない場合には「タタン、タタン」若しくは「カチャチャン、カチャチャン」の様に、ひとつずれた感じの音がします。


 

 

ピストンの「0点位置」の仮合わせが出来ましたら次はアイドル・アイドリング調整です。

エンジン始動後に調整する「パイロットスクリュー」は全閉から1回転戻した所に仮合わせしておきます。

エアクリーナーは取り外した状態で、目視と指先の感覚で合わせていきます。
キャブレター側面に付いたアイドルスクリューをゆっくりと締め込んでいきます。
スクリュー先端部がピストンに到達すると、吸気側から除くとピストンの上昇が見られます。
その付近でアクセルを何度か回しつつ、指先でアイドルスクリューに触れているとピストンが戻った時に振動として伝わってきます。
この振動を頼りにピストンが最下部にあり、尚且つアイドルスクリューがピストンに触れた位置を探します。
そしてこの位置が本当の『0点位置』となります


 

 

「0点位置」が決まりましたら、仮セットして「1-1/2」回転締め込みます。
これでエンジンを始動して1000回転前後で安定させます。
アイドリングするまでの作業が終わると次は「パイロットスクリュー」の調整です。
手順としては、スクリューを基本の位置から「1/4」回転ほど締めたり緩めたりさせて、アイドリング回転が一番高くなる所を探します。
この車両では「2回転戻し」が良い位置でした。FCRなど、社外キャブレターでは
一番回転の上がった所から「1/4」回転締め込んで繋がりを良くしますが、
W1-W3に関しましては回転落ちによるエンスト(エンジン・ストールの略)回避の為
回転が一番上昇した所で合わせています(私的見解)。
パイロットエアが決まったら、最後にアイドリングを1000rpm程に(お好みで上下)
調整して完了となります。


 

 

今回作業した車両・W3では前述の0点から約2回転締め込んだ位置が1000rpmでしたが、パイロット調整後の位置としては、0点位置から「1-5/8」回転で落ち着きました。

 

調整が終わったら、ご自身のデータとして現状のアイドルスクリュー位置を把握しておく為、
調整が完了した今調子の良い位置から締め込んで止まるところまでが、何回転なのかを調べておくと、次回調整時に役に立ちます。

 

 

ワイヤーキャップもしっかりと下まで被せて
汚れや水分の侵入対策とします。