650RS/W3 ~ステムベアリングの交換を解説

W3
650RS/W3 ~ステムベアリングの交換と調整
W3ステムベアリング ~当社製ステムレース・コーンを使用しての交換作業

ステムベアリングはW1S,W1SA,W3のどれもが販売終了品です


650RS/W3用は純正加工品として当サイトで用意しています


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ステムベアリング交換の概要

フロント廻りを分解・取り外します

  • フロントタイヤとフェンダーを外します
  • トップブリッジを外します
  • ステムナットを緩めます
  • ハンドルストッパーを取り去ります
  • フォーク左右を抜きます(ヘッドライト回りはそのまま移動で可)
  • アンダーブラケット・ステアリングステムを外します

ヘッドライトとライトステーは分割せずワイヤー類もハンドルも外さずに、トップブリッジごとそのままフレームに立てかける様に位置をずらすだけで作業に支障はありません。

周辺部品を外さずに車体後方へずらす場合は各部に傷が付かない様にタオルで包むなどの養生を心掛けて下さい

ステムベアリングの取り外し

ドライバーとハンマー、そしてタガネで取り外せます

少し乱暴ですがベアリングプーラーが無くても取り外しは可能です。
フレーム側はマイナス貫通ドライバー。ロングタイプをあてハンマーで叩きだします。
ステム側のレースはタガネを隙間へ垂直に打ち込み、隙間が出来たら水平方向に叩いて取り外します。

【アンダーブラケット画】

①の部分、ステムとレースの合わせ目にタガネを打ち込みます。
隙間が出来たら②の部分を叩き、垂直方向へと押し出します。この時一部分だけでなく少しづつ全周を叩く様にするとスムーズに外す事が出来ます。

ベアリング・レースの打ち込み

打ち込みには取り外した古いレースを使う

ベアリングレースは鋼材ですので叩いても問題ありませんが、斜めに打ち込むと変形・粘りの無い材質特性から簡単に割れてしまいます。

下側は深いので曲がって入らない様に要注意。
ハンマーで均等に叩いてフレーム面一まで押し込めたら、そこからは古いレースを当てて叩き最後まで押し込みます。
打ち込みが完了したら上からドライバー等を使ってハンマーで叩いて古いレースを取り出します。


 

 

 

上側は浅いので打ち込みがし易いです。
下側から打ち込むのがセオリー。これは先の古いレースを外すのに上部スペースを確保する為でもあります。

ベアリング組み付けと調整方法

スチールボールの組付け方法

ベアリング組み込みにはグリスを豊富に

グリスは耐水性能が高く、更に極圧での潤滑性能も持ち合わせている物が理想的です。



 

レースにグリスを盛り付ける要領で塗っていきます。そこへ「1/4」スチールボールを置いていきます。これは上下・片側「20個」、計「40個」使います。

スチールボール・鋼球が置けたらその上からもたっぷりとグリスを敷き詰めていきます。
相手側・ステムコーンにもグリスを盛り、それを被せたらグリスが満遍なく行き渡る様に回します。この時、時計回り・反時計回りとそれぞれに行います。


 

 

ステムシャフト側にもレースを打ち込みスチールボールを取り付けます。
レースの打ち込みはサイズの合うパイプを使うと容易に作業が行えます(ここでは不要になったインナーチューブを使っています)。


 

この後ステムシャフトを挿入しキャップを被せてナットで固定しますが、耐水・防水効果を上げる為にステムコーン上面にもグリスを塗って組み込みます。
組み込みが終わったら、ステムを左右に動かしてグリスを馴染ませます。

ステアリングステム調整方法

W系は基本的にZ1/Z2と同じで同要領での作業が行えます

WもZもステムナットがシングル・1枚ですので、ステムボルトの締め付け具合でステムの作動が変わる事まで同じです。



 

 

ステアリングステムを右いっぱいに切り、ステムナットを締め付けます。
この状態でステムを左右に数回動かして馴染ませます。


 

 

 

次にステムを左に切ってステムナットを緩めます。


 

 

親指と人差し指の2本指でナットを掴み、その状態でギュっと締め付けた加減が作動性の丁度良い位置となります。
ステムを前後させてガタが無い事を確認してからフロント廻りを組付けます。

この後トップブリッジを組み込みますが、ステムボルトを締めると上からの圧力によりステムの動きは若干悪くなります。全ての部品が組込み終わったらジャッキでフロントタイヤを浮かせ、前後左右にステムを動かしスムーズに動くか・前後のガタツキは無いか確認します。
スチールボールの良い点は少々きつく締めても動きが妨げられないと言う事。
実走して最終調整をして作業完了となります。

理想はガタツキが無い事はもちろんですが、フロントタイヤを浮かせた車体を軽く傾けるとハンドルが瞬時に切れていく状態。

 


 

テーパーローラーでは難しい調整もスチールボール型では比較的容易に理想形での調整が可能

テーパーローラーベアリングは高額商品にも拘わらず専用品ではありません。
アンダーブラケットが下に2mm程突き出した取り付けになり、そのせいでライトステー部分に隙間が出来てしっかりとした固定が出来なくなります。
調整も難しくガタを無くすと動きが妨げられるのでスチールボール方式がお薦めです。
(テーパーローラーベアリングの一般市場価格は12000円~16000円です)

ベアリング調整をしっかりと行った車両でもブレーキを掛けると「カックン」と微妙にガタツキが確認出来る車両があります。少数ではありましたがこの原因はベアリングではなく、ステムシャフトとトップブリッジのクリアランスが開いてしまっている事でのガタツキでした。本当に微妙なものですがベアリングと思ってしまう様なガタツキですので、交換・調整後の「カックン」は要注意・要確認です。