キャブレターのオーバーホールと共にフューエルタンク内の洗浄も
タンク内のガソリンは2年も経過すると十分に傷みます。古い燃料を抜いて内部で固形化したガソリンを除去します。
フューエルタンクも傷むと燃料は固形化する
ガソリンはタンク保管であっても2年を超した辺りから急速に腐食が始まります。
同時にフューエルコック内部でも同じ事が起こりますのでタンクとタンクキャップ、そしてフューエルコックは3点セットで整備します。
内部に残っている燃料が少ない場合ガソリンは揮発して無くなってしまう事もあります。
燃料が無くなり固形化せずとも今度はもうひとつ、錆の発生と言う問題点があります。どんなに大事に使われていても、タンク成型時に熱のかかった部分は必ずそこから腐食するのが金属の特性です。
タンク整備は固形化した燃料を溶かした後、錆の確認を必ず行います
中に残っているガソリンを抜き去りキャブレタークリーナーをタンク中に満遍なくスプレーします。
時々タンクを回転させ、10分程おいておくとクリーナーの泡は消え傷んだ燃料は溶け落ちてきますのでこの溶液も抜き出します(汚れが酷い場合はこの作業を数回繰り返す場合もあります)。
最後に洗油若しくは洗剤で残った溶液と汚れカスを洗い流し乾燥して作業完了です。
私はガソリンで流した後に業務用アルカリ系洗剤で洗浄しています
既に錆取り後コーティングされているタンクですが実はこれが一番気を使う所で、シンナーなどの溶剤には強いのですが傷んだ燃料で腐食する特性があります。ですので一旦コーティングしたタンクはガソリンを傷ませない様にする事が大事です。数年放置されコーティングが腐食・ダメージを受けてしまうと再度のメンテナンスが必要となります。
1.コーティング剤の剥離
2.固化燃料の除去
3.錆落とし
4.コーティング剤の注入
コーティング剤の剥離は剥離剤を使用しないと落とせません
十分に気を付けてもタンク塗装へのダメージは免れませんから、追加作業に外装塗装も含まれてしまい修理費用が高額になってしまいます。
フューエルコックの分解
コック内に残ったガソリンが固形化すると当然のことながら燃料は送られません
コックの場合、燃料の固形化に加えて水分による錆の発生も必ずあります。
錆びによる腐食が酷い場合は各部マスキングを施し、サンドブラストにて処理を行います。
~~~ピックセットで錆を削り落とした後にブラスト処理を施します。
ブラスト後には腐食度合いが良く分かります
フューエルコックの分解
コックの前期・後期共に全分解し洗浄します。
切り換えレバーを外す事により詰まってしまったパイプ内の貫通・洗浄が可能となります。
作業手順として、まずストレーナーをドライヤーで軽く温めてからパイプから外します。無理に外そうとするとネットが破けたり、先端部分から切れてしまいますので要注意。
一度も交換された事の無いコックは当然ストレーナーも経年劣化で腐食が進行しています。そこへ燃料が傷んで固形化してしまうとストレーナーは再生不能です。PMCやMRSからZ用で販売されているコックから移植するのも良い手段です。
レバーは丸ビスを緩めると外れてきます。その奥には切り換え用に穴の開いたプラスチック部品が入っていますが、これが嵌ってしまっていてなかなか出てきません。
ここは「L字型ピック」を使うと容易に引き出す事が出来ます。
フューエルコックの洗浄
詰まったパイプの洗浄用に「スプレーノズル」を用意
毛先の長い歯ブラシなどを使ってチャンバー内からパイプ付け根、そして切り換えレバーの奥まで全てを綺麗に洗浄します。
パイプ内にはキャブレタークリーナーを注入しスプレーノズルを差し込んで固形化燃料を溶かしながら貫通させます。
フューエルコックの組み立て
組み立てはシリコングリスを塗布して行うとレバーの動きもスムーズに、軽い操作で切り替えが行えます。ですのでレバーのOリングと穴の開いたプラスチック、この部分には必ずグリスを塗って組むようにします。
純正品は販売終了、複製品の追加生産も現段階では未定です。上手に整備して大事に使いましょう