ガバナーとは進角を制御している部品です
W1S,W1SA,W3のパーツリストを見ると分かりますが、ガバナーは3車種で部品番号が異なります。
W1S,W1SA,W3で部品番号が異なる理由とは?
大きな違いはポイント・コンタクトブレーカーの使用個数
W1Sは1個、W1SAとW3は2個使われています。これによってガバナーに付く「カム」の形状が変更されています。
W1SAとW3での違いは見分けがつきません。カム形状も同じで全体の寸法も同じです。
唯一外観での相違はW3ではガバナー本体とスリーブが一体式ですが、その他何が違って部品番号まで変更されているのかと言うと、それは「材質」です。
いずれも左側が「W3」で右側が「W1S」の物です。
【W3】 【W1S】
W3/W1SAとW1Sでは進化の度合いが大きく、外観の違いを見るとW1Sでは取り外せるスリーブがW3ではガバナーと一体式になりスリーブ長の変更もあったり、その他スプリングがセットされる部分にも違いが見られます。スプリング・フック部分は見た目に肉盛りされ(W3/W1SA)、振動による摩耗対策が取られています。ウエイトのベースにも変更されプレート2枚構成の強固な作りになっています。
W1SとW1SA・前期までは材質がいわゆる「鈍ら(なまくら)」なのでコンタクトブレーカーケースから抜く際に、誤って曲がった角度で叩いてしまうと簡単に歪んでしまう程の弱さです。そんな事からW1SA・後期とW3では材質が見直され、芯棒が「焼き入れ」された丈夫な物に変わっているのです(W3ではウエイト部分の材質も見直されW1SAよりも強度が上がっています)。
W1SとW3のガバナー
W1SとW3のガバナーで両車の違いを検証してみます
W1Sはワンポイントですので点火時期の調整は比較的容易です。ですがガバナー芯棒に歪み・曲がりがあると片側でしっかり合わせても、もう1回転させたもう一方のシリンダー側では合わない場合があります。芯棒の曲がりを1/100まで精度を出さないと両シリンダーで合いマークがセンターに来ません。4/100程の曲がりでも合いマークはかなりずれた位置となり点火時期は調整不能になります(この「4/100」とは見誤った角度で叩いた程度で曲がる範囲です)。
【W3】 【W1S】
カム山の形状違いも並べてみると良く分かりますが、ここがポイントの数で大きく違う点です。
W3/W1SAは貝殻形状ですが、W1Sでは左右に山が伸びて角の取れた菱形形状なのが特徴で見分け方でもあります。
ガバナーのメンテナンス
クリップを外せば簡単に分解可能
カムとウエイト部分はクリップを取るだけで容易に外す事が出来ます。
但しシャフト先端部分が潰れてカムが抜けない物も多いのいので注意が必要。
ウエイト部分はスプリングを外してからクリップを取ると抜き出せます。
クリップ部分に変形があってカムが抜けない場合は、600番程度の耐水ペーパーに潤滑剤を塗布し修正研磨をしてから抜きとります。
無理やりグリグリさせず、スッと抜ける様になるまで平らにならします(サンプル画像は既に抜いた後写真を撮り直したものです)。クリップ周辺はどうしても変形し易いので丁寧に修正してからカムを外します。
シャフト中央の凹み。ここに汚れや摩耗粉が溜まって動きが悪くなっている物が殆どです。
カムを抜いたら綺麗に汚れを取り除き、新しいグリスを塗って動きをスムーズにします。
カム側の内径部分も同様に清掃して必要があれば耐水ペーパーで内側を修正します。
部品の性質上、洗浄し難い物でもありますので結露し難いパーツクリーナーを選んで使用するのが良いでしょう。
一部でW1SとW3の表記と画像が入れ替わっていました。分かり易い様に記事にも追加をさせて頂きました。参考にされていた方には混乱を招いてしまい申し訳ございませんでした。
=カワサキオート=