カワサキ Z1/Z2ステアリングステムの整備~マニュアルで解説されていない締め付け方法

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Z1/Z2 ステアリングステム整備

 

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 車体の要とも言うべき「ステアリング」

ハンドリングが良い悪い、それ以前にこのステアリングステムの作動が不良だと走り出しから乗り辛いバイクになってしまいます。 旧車ブームになったばかりの頃は、個人オーナーから販売店員まで「19インチは独特で乗り難い」とか「19インチの味だよこれは」等と整備不良なのを知らずに口々にそう会話をしていたのを多く耳にしました。話のタネになっているその車両たちを乗ってみると、やはりどれもステムベアリングが不良で動きが悪かった思い出があります。

Z1/Z2は明確な整備情報がマニュアルに記載がありませんので、ここでは実際の経験と同クラス・他車種からのフィードバックから詳細を解説していきます。

 

数字にすると一体どれくらいの締め付けトルクなのか~?

~~~先に申し上げますと750㏄クラスロードバイクで「0.1~0.2kg-m」です

2サイクル250㏄・オフロードバイクで「0.5kg-m」と言うデータです。 ステアリングステムはホイールの様に中にカラー(スリーブ)は構造上使っていませんので、締め込めば締め込んだだけキツく固くなり果てはベアリングにダメージを与えます。

ではこの「0.1~0.2kg-m」という数字は実際どれ位の力加減かと言うと、親指と人差し指でギュッとトップスレッド(丸に十字の切り欠きがあるナット)を締めた状態です。

驚かれるかと思いますが本当にその程度の力で良いのです。 ・・・が、それは最終段階での話しでそこに至るまでの整備過程がもちろんあります。

ステアリングステム調整の整備行程

前回りは全分解になりますので、ここは是非新品に交換してあげましょう
年間走行距離にもよりますが、メンテナンスによって20年使える事もあります

ここではベアリング交換は割愛して、あくまでもステム調整に絞って解説を進めます。

【調整のみの場合】

 

トップブリッジにあるステムボルトを緩めます

 

フォークを固定するM8ボルトも左右共に緩めます

 

~~~「トップスレッド」と呼ばれるこのナットで締め付け調整をします

 

ハンドルを左にいっぱいきった状態でこのナットを一度緩めてから、親指と人差し指の2本で目一杯締め付けます。 先に緩めたステムボルト類を規定値で締め込みます。

締め込むときはハンドルは右にきっておきます。タンクの保護と合わせて作業性を良くする為にフューエルタンクは外した状態で行うのが良いでしょう(本件では外さず作業しています)。

全ての作業完了後、ジャッキアップしてハンドルがスムースに左右に作動するかの確認は重要です。

ガタツキがでないギリギリの範囲で一番抵抗が無くスムースに作動するところが理想的です。

 


 

【規定トルク】

ステムボルト:10.0kg-m

M8ボルト   :1.5~2.0kg-m

 

最後にアンダーブラケット(ステアリングステム)のM12ボルトを一旦緩めてから規定値で締め込みます

これは整備中に少なからず起こる微妙な「歪み」を取って修正する為です

規定トルク:  kg-m

~~~実走してみてブレーキング時に「カックン」とこなければ完了です

販売店の作業ですと時間の関係で難しいかも知れませんが、趣味の範囲で作業を行うのであれば少しづつ締めては実走の工程をを繰り返し、最後にガタツキが取れる所で合わせてあげるのが良いでしょう。


 

『アンギュラ』タイプ・ステムベアリングの販売はこちらからどうぞ

 

 


【ベアリングを新しく交換した場合の調整方法】

 

 

 

 

  1. ベアリングを組付け後、トップスレッド(十字ナット)を「4.0~5.0kg-m」のトルクで締め付ける
  2. ステアリングステムをハンドルストッパーいっぱいまで左右に10回程動かす
  3. トップブリッジとフォーク、フロントタイヤを組付けた状態で、「2.」と同じようにハンドルを左右に動かす(タイヤは地面に接地した状態)
  4. トップブリッジを緩めてトップスレッドを緩める
  5. トップスレッドを「0.1~0.2kg-m」、親指と人差し指で締め付けた後トップブリッジを固定する
  6. アンダーブラケット(ステアリングステム)脇のM12ボルトを一旦緩めてから再度規定トルクで締め付け固定

ステアリングステムの調整はハンドルにガタツキが無く、それでいてスムースに動く様に行います

実際の作業としてのステアリングステムは、フロントホイールを浮かした状態でフロントフォーク下部を前後に動かした時にガタが無く、ハンドルを軽く回した時にはそのまま自重で抵抗なくスムースに回転するように調整します。

ZやWの様にシングルナットの特性上、トップブリッジの締め付け加減でベアリングの動きも硬くなります。組み立て後は必ず実走にて最終調整を行います。

 

  【純正部品情報】

  • コーン・ステアリングステムヘッド、アッパー / 92047-011: 767円(税込み)
  • レース・ステアリングステムヘッド、ロアー  / 92048-006: 583円(税込み)
  • レース・ステアリングステムヘッド、アッパー / 92048-008: 842円(税込み)
  • コーン・ステアリングステムヘッド                  / 92047-012: 767円(税込み)
  • プレーンワッシャー            / 92022-231: 184円(税込み)
  • オイルシール               / 92056-003: 356円(税込み)
  • スチールボール 1/4            / 600A0800 : 54円  (税込み)×38

(2019年現在)

~~~これら全て現行車のニンジャ400(EX400G)との統合部品になっています

 

フレーム側、ステムレースは「650RS / W3」と同じ部品ですので、W3の整備時にはここは新しくすると良いでしょう。残念ながらステム側部品は販売終了ですので、このフレーム側だけでも新品交換はしたいところです。

純正の「スチールボール」タイプと、社外品の「テーパーローラー」タイプ。どちらが良いかと言うと一長一短で、カッチリ感・剛性感が感じられるのはやはりテーパーローラーですが、動きのスムースさに於いては大きく水をあけてスチールボールタイプに軍配が上がります。

テーパーローラーは「線」、スチールボールは「点」で接触していますのでそれを考えれば、剛性のテーパーローラー、作動性のスチールボールと言えそうです。メンテナンス性に限って言うと、スチールボールの方は鋼球交換が出来たり、グリスの入替も隅々まで可能だったりとパフォーマンスは高いと思います。

テーパーローラーの場合、ガタが無くなるポイントと動きが重くなるポイントが殆ど同じです。
その特性上ガタが無く動きが軽いポイントを探す事は不可能に近い作業です。
ガタがあってはいけませんのでガタの無い、少しだけ重くなったポイントで妥協せざるを得ません。
ボールタイプに於いては、ガタが無くなる所から少し締めても軽さの維持が可能な特徴を持っています。