Z1,Z2オイル交換~Z系 旧車用エンジンオイル追記

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Z1,Z2 エンジンオイルの考察
Z1/Z2などZ系オイル交換/エンジンオイルに関するQ&A
ここでは空冷エンジンの生命線「エンジンオイル」について解説しています。空冷のみならず潤滑作用と冷却作用を併せ持つエンジンオイル。今一度この「エンジンオイル」について考察してみるのも今後の旧車性能維持にきっと役に立つことでしょう
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オイル成分の考察~化学合成油と鉱物油の違い

【化学合成油】

鉱物油は天然成分から抽出されて出来ている物なので、ある程度の不純物が含まれています。それに対して化学合成油は「ナフサ」と呼ばれる原料から人工的に合成・作られます。不純物を含まない方が熱安定性や粘度特性に対し優れた性能を持ち、鉱物油に比べ安定した品質が高いので高性能を求められる場面で使われます。

粒子は細かく金属製ガスケットには向くが従来の非金属ガスケットではオイル漏れの原因となる

【鉱物油】

原油から、ガソリン・灯油・軽油・重油などの重質成分を精製した物が鉱物油です。

 

粒子は粗く非金属ガスケットに対応し、オイル漏れを起こし難い


合成油に比べ鉱物油の方が性能低下が緩やかな傾向があり、それ故「長持ち」と称されます

オイル性能の低下~どうして交換が必要なのか

エンジンオイルは走る毎にその性能は低下していきます。オイルに含まれる「添加剤の消耗」「オイルの酸化」、そして劣化に伴う「オイルの汚れ」の3点が主だった理由です。


【添加剤の消耗】

  • 洗浄分散剤消耗→ピストンリング膠着→焼き付き
  • 酸化防止剤消耗→金属腐食→燃費低下

【オイルの酸化】

  • デポジット生成→オイル経路の詰まり→焼き付き
  • 金属腐食→摩耗増加→燃費低下

【オイルの汚れ】

  • 埃・金属摩耗粉→摩耗増加→燃費低下
  • 未燃焼ガソリン→油膜剥離→焼き付き
  • 水分→凍結・結露→焼き付き

 



***デポジットとは汚れの堆積物を表す用語です


エンジンオイル交換~交換のタイミング

エンジンオイルは走行距離が少なくても時間の経過と共に劣化します。オイルの交換時にはオイルの汚れなどを濾す役目をするオイルフィルター・オイルクリーナーの交換も必須です。フィルターの交換の目安はオイル交換2回毎が理想的です。カートリッジタイプで10000km、エレメントタイプで6000km走行毎で良いと思います。
未だに車両メーカーからは空冷車は3000kmまたは1年毎、250ccまでの水冷車&ドライサンプ車両とオイルクーラー付き空冷車は6000kmまたは1年毎、251cc以上の水冷車は10000kmまたは1年毎・・・を目安に交換を勧めています。実際の所オイルメーカーの良質なエンジンオイルはしっかりと1年の耐久性能はありますが、殆どのオイルに添加されている「ポリマー」のせん断作用でオイルは汚れエンジン内部の洗浄効果も薄れていきます。最終的には重要な潤滑と冷却効果も低下しますので1年は使わず(使えず)どんなに期間を空けても半年に1回は交換したいところです。
50㏄・4サイクルスクーターで検証してみましたが、常に全開・高回転で走る原付に於いてはモチュール300Vなどの高級オイルを使用しても走行2500kmが限界です。原付二種・125ccクラスでも3000kmまでもたないのが現状です。

オイルの選び方~純正オイルが良い?

純正オイルはそれはそれで良いのですが・・・。

メーカーから純正オイルについて『エンジン開発から使われていて各エンジン特性に合わせた最適なオイル』と説明され、さらに『市販品はあらゆるエンジンに適応するように作られた一般的なオイル』と付け加えられています。しかしオイルメーカーも様々な現場でオイル専門として開発していますので車両開発メーカーの作るオイルよりも秀でた部分・突出した特性が多くあると思います。

 

2サイクルオイルではヤマハオートルーブが秀逸で分離給油方式ではなかなかの性能でした。純正で4サイクル・ガソリンエンジン用オイルはヤマハ製品「ヤマルーブ」が国内4メーカーでは一番の高性能オイルです。
ホンダドリーム店やヤマハのYSPでは各メーカー指定オイルのみしか取り扱いが出来ないメーカー契約です。 社外オイルメーカーを使いたい場合はディーラーでの交換は出来ませんので希望のオイル取扱店舗を探す事になります。
空冷車両、特に旧車においてのオイル選びは重要です。季節ごとにオイル粘度は変更しないでも十分に対応できるオイルも数多くあります。粘度の高いオイルを1年通して使う事で十分エンジンの保護に繋がります。

エンジンオイル量にも気を遣う~量は多ければいいの?

オイルの量が規定以上・規定以下でも内部パーツに負担が掛かりトラブルが発生します

【オイル量規定以上】

  • オイルが燃焼室内に混入し燃焼→燃焼室内・排気管内にカーボン付着→エンジンOH(オーバーホール)
  • クランクがオイルパン内のオイルを撹拌→燃費とエンジンレスポンスの悪化

【オイル量規定値以下】

  • オイルストレーナーからオイルが吸われない→潤滑不良・冷却不能→カムシャフトの摩耗・焼き付き

Z1,Z2では確認窓で規定範囲内2/3の位置まで注入し3.5Lのオイル量で合わせています

一般的な疑問~二輪と四輪用のオイル、オイル添加剤について

二輪車の殆どはエンジンとミッションそしてクラッチが一体になった構造で、エンジンオイルはその全てを潤滑せねばなりません。それと共に二輪車は四輪車に比べてエンジンの回転域が高いので、オイルに求められる性能も異なります。実際にディーラー職員が自身の二輪車に四輪用オイルを使ってエンジンを壊した事例が3件ほどあります。

仮に四輪車用オイルを二輪車に使用した場合低摩擦によってクラッチが滑ったり、低粘度性によるギヤの耐久性低下などトラブルを引き起こす原因となります。

市販のオイル添加剤。これは善し悪しですが、基本的にオイルに含まれる添加剤と異なった成分の添加剤を混ぜるとお互いに悪影響を及ぼす可能性があります(こうなると性能が十分に発揮出来なくなります)。使うのであれば同じメーカーで発売されている物にすると問題の起きる事は無くなります。オイルがワコーズであれば同メーカーから高性能な添加剤が発売されていますのでそれを使うと良いでしょう。高性能なオイルになる程添加剤は不要となっていきます。

エンジンオイルに求められる性能とは~空冷旧車へ

酸化劣化抑制

高温にさらされる機会が多い二輪車用オイルは耐熱性能が求められます。オイルが酸化劣化するとエンジン内部金属が腐食します。

蒸発防止

高温にさらされると低粘度成分から蒸発していきます。蒸発すると粘度が増加し潤滑性が著しく阻害されてしまいます。



高温時の摩擦係数低下抑制

これは「FM剤(Friction Modifier)」と呼ばれ、温度が上昇すると摩擦係数を低減する作用がある添加剤です。

ギヤ面の損傷防止

二輪車のエンジンオイル性能が特に作用される部分のひとつにトランスミッションのギア歯面があります。粘度の低い四輪車用オイルを使うとギヤの歯面を損傷する場合もあります。


せん断安定性

エンジン・ミッション・クラッチの潤滑まで行う二輪車のエンジンオイルは、回転するギヤやカムシャフトによってオイル分子が砕き切られてしまいます。このせん断安定性が低いと粘度指数向上剤が切断されオイルにとって重要な粘度性能の低下に繋がります。

一般的に使われる添加剤の「ポリマー」はせん断性が弱く、せん断されるとオイルが汚れる要因にもなります。

前述のオイルメーカー「アッシュ」はノンポリマーでエステルを使っていますのでせん断性能は高く、エンジン環境の良い状態を長く保ってくれる信頼の高い高性能オイルです。