Z1/Z2 ボアアップまでを考慮したFCRキャブレター・口径の選び方 ~ノーマルキャブ・セッティングデータ

Z-1
Z1/Z2 FCRキャブレターの口径選び
Z1/Z2 FCRキャブレターの口径選び

スモールボディかラージボディか

同じ排気量でも口径が「33Φ」のスモールボディと「35Φ」のラージボディでは乗り味は全く変わってきます。
口径差はたった「2mm」の差ですがボディは大型になり、ジェットはメインとスロー共に「10番」番手が上がります。

 


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FCR33パイと35パイ

一般的に低中速メインの33パイ、高回転型の35パイとの通説

ミクニHPでは排気量と口径の関係式が公表されていて、試しにZ1の903ccで計算してみると「35.9mm」と導かれます。
だからといって「37Φ」では大きすぎ、街乗りでは扱い辛く感じる場面もあるかもしれません。
排気量を「1100cc」にしたZ1の場合、バルブ径もカムもスタンダードでポートも特に加工せずボアアップのみですとFCRの口径は「33Φ」でも十分に追いきれセットアップも可能です。
一般に「1100cc」と言っても境があり、「1045cc」も「1105cc」も総称されて「1100cc」と呼ばれる節があります。

 

経験上「1045cc」まではスモールボディ・33Φを取り付けています。
「1105cc」が微妙な所で33Φも35Φ、どちらもそれぞれに良い面があり要望に合わせるのに毎回悩む所です。

たった「2mm」の差ですがボディは大型化し、メインジェットで見ると「10番」以上の差があります。街乗りから低中速のワインディングがメインの使い方ですと「33Φ」、中高速コーナーの続く峠や高速道路での移動が多い使用方法では「35Φ」と考えています。
不思議な事に実走検証してみると、アクセルレスポンスのフィーリングが良いのはワンサイズ上げた「35Φ」が一番心地よく、予想に反して「33Φ」の方が若干ダルさを感じる結果でした。
空燃比もこの「35Φ」が全回転域で安定しており、排気量とチューン度合いの兼ね合いを幅広くカバー出来る35Φはオールマイティーな口径と言えるでしょう。

余談ですが「CRキャブレター」に於いて一般に好まれるのは「29Φ」ですが、実際にはふたサイズ上げた「33Φ」がFCR35にあたるオールマイティーな口径です。

スタンダードの「1000cc」(厳密には「998cc」)のZ1000R・Z1000Jには「35Φ」を推奨・取り付けるのに、なぜZ1の「1100cc」は「33Φ」なの?

まず排気量が200cc程上がっても多くの混合気を取り込むための処置がなされていなければ、特にキャブレターの口径を大きくする必要は無いと思います(だからと言って35Φが合わない事はありません)。ポート研磨と合わせてバルブ径を大きく、ハイカムで充填効率が上げられた仕様でのボアアップであれば「35Φ」を推奨します。
逆から辿るとサーキット以外での使用を考えたフルカスタムでもこの「35Φ」でフルにチューニングされたエンジン性能を十分に引き出せると言う事。
では前出の仕様、1100ccのボアアップに加えポート・バルブ・カムまで変わっている仕様で「33Φ」の装着ではどうなるか?
吸排気のセッティングにもよりますが低中速でのツキが良い反面これは高回転での伸びがやや重く、吸入負圧・吸気の抵抗による抜けの悪さが感じられる場合があります。

排気量が大きくても(1200ccクラスでも)「35Φ」で十分なパフォーマンスです。
バルブ径とポートの大きさ等、機械的要素で大半部分が決定されますから大きく変えられないそれらの関係上キャブ口径は必然と上限が定まってくるのです。
ポートを拡大するにも限界はありますし、バルブ径もそこまで大きくは出来ません。
Z1000J/Z1000R以降は進化していて、Z1/Z2よりもバルブ径は上がっていますしポートも大きくなっています。ですので「1000cc」とは言ってもキャブ口径「35Φ」を使います。Z1/Z2ベースでは使いませんがJ径/ローソンに於いては「37Φ」を使う場合もあります。

FCRは加速ポンプが装備されています。口径が大きい場合に見られる開け始めのトルクの無さは、その恩恵によって補えますので問題なく使用可能です。

37~39Φはむしろサーキットでの使用を考えた用途と思って下さい。一般道でもっと高回転でパワーをという場合は「37Φ」が低中速まで考慮した限界口径と思います。

Z1/Z2で見た場合、「157cc」の差がありながら純正キャブレター口径は同じ「26Φ」が使われ、その後1015ccまで拡大された後継機でも「26Φ」が標準というのは面白い所です。
(Z1初期とZ1Rでは「28Φ」を使用)
それらを踏まえても「1100cc」で口径「33Φ」は小さい事はなく、低中速の常用域での力強さ・アクセルレスポンスの忠実さを持ったベストサイズのひとつと言えるでしょう。

キャブレターに関しては「大は小を兼ねる」、「迷ったらサイズを落とす」と言った言葉は当て嵌まりません。その車両の仕様に合わせた適切な口径を選ぶ事が大事です。

今後のエンジンチューンを考え「35Φ」とするのも選択肢のひとつです

 

 


純正キャブレター・セッティングデータ

 

 【年式による純正キャブレター・セッティングデータ】

Z1初期 ~1972年
型式       : VM28SC
メインジェット  : 112.5番
パイロットジェット: 20番
ジェットニードル : 5J9/クリップ位置 3段目
エアスクリュー  : 1-1/2回転戻し
実油面      : 32mm 前後1mm

Z1A/Z1B ~1973年
型式       : VM28SS
メインジェット  : 112.5番
パイロットジェット: 17.5番
ジェットニードル : 5J9/クリップ位置 2段目
エアスクリュー  : 1-1/4回転戻し
実油面      : 35mm 前後1mm

Z900A4
型式       : VM26SS
メインジェット  : 115番
パイロットジェット: 17.5番
ジェットトニードル: 5DL31/クリップ位置 3段目
エアスクリュー  : 1-1/4回転戻し
実油面      : 30mm 前後1mm

『Z1000A1』
型式       : VM26SS
メインジェット  : 107.5番
パイロットジェット: 17.5番
ジェットニードル : 5CN8/クリップ位置 3段目
ニードルジェット : O-6
エアスクリュー  : 1-1/4回転戻し

『Z1000A2』
型式       : VM26SS
メインジェット  : 105番
パイロットジェット: 15番
ジェットニードル : 5DL31/クリップ位置 3段目
ニードルジェット : O-5
エアスクリュー  : 1回転戻し

『Z1R』
型式       : VM28SS
メインジェット  : 107.5番
パイロットジェット: 15番
ジェットニードル : 5CN12/クリップ位置 3段目
ニードルジェット : O-3/O-1
エアスクリュー  : 1-5/8回転戻し

『Z1000Mk2/Z1R-2』
型式       : VM28SS
メインジェット  : 105番
パイロットジェット: 15番
ジェットニードル : 5CN15/クリップ位置 3段目
ニードルジェット : O-1
エアスクリュー  : 1-1/4回転戻し