Z1/Z2,Z1R,Z1000MK2 キャブレター油面調整 ~専用ツールを使って実油面・フロートレベルを測定

Z-1
Z1/Z2~Zシリーズのキャブレター油面調整方法を解説
Z系純正キャブレターの油面調整を解説

ここではカワサキ純正工具を使ってキャブレター油面・フロートレベルを測定します

販売開始から約半世紀も経過しているにも関わらず、未だに専用工具はメーカーより販売されています。このツールを使用してキャブレターの油面を確認します。

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専用工具はカワサキ純正品を使う

測定用の特殊工具はリプロメーカーからも販売

ドレミコレクションからも初期・後期用の双方が販売されていますが、純正部品での購入をされた方が圧倒的に安いです。既にメーカー販売終了と思ってしまいリプロメーカーから購入される方も多いと思いますが、カワサキ純正部品として現在も販売中です(2020年9月現在)。

 【カワサキ純正特殊工具の部品番号と価格】

・スペシャルツール(初期型・底面ドレン用):57001-122(税別4180円)
・スペシャルツール(後期型・側面ドレン用):57001-208(税別7030円)

ドレミコレクションでの販売品も純正部品を取り扱っていますので、金額は違えど同じ物ですので安心して使う事が出来ます。
初期用は「Z1」専用品になりますが後期用はZシリーズの他・他機種にも使え、メーカー違いではスズキのGSでも使う事が可能です

フロートレベルの測定 ~工具の使い方

メインスタンドを立てて車体を真っすぐにした状態で測定します

メインスタンドが外されている車両はレーシングスタンドなどを使って車体を直立させて作業を行います。


 

これが「スペシャルツール」、専用の特殊工具です。
今回のサンプル車両はZ1000MK2ですので後期型を使って解説しています。
(初期型用でも作業内容は同じです)


 

 

とても使い易く出来ていて作りもしっかりしています。ホース側には1mm刻みで目盛りが記されており、当初は自作しようと思っていましたがこれは買って揃えた方が得策です。

フロートチャンバーのドレンボルトを外してこのツールをセットするだけの簡単な作業ですが、ドレンボルトを外すとガソリンが流出しますので燃料コックを「OFF」にしてから受け皿をあててガソリンを抜きます。

取り付け後ホースを上向きにした状態で燃料を流すと目盛り付きホース内にガソリンが上がってくるので、その高さを読み取る事で油面・フロートレベルが測定出来るのです。
油面調整はフロートチャンバーを外さないと作業は出来ませんので、車体から取り外しキャブレター単体にした状態で作業を行うのが良いでしょう。
(キャブレター本体を水平に固定出来るトレーを準備の事)

 

単に測定のみで数値の確認だけであれば車体にセットされた状態での作業で構いません

フロートレベルの測定 ~油面の読み取り方

工具をセットし目盛りで油面高さを読み取る

キャブレターが固定出来たらドレンボルトを外して燃料を排出します。
ボルトの代わりに工具を取り付け、ホースを上向きにして燃料ホースからガソリンを注入します。

 

オイル差しを使って燃料を注入しています。


 

 

側面に向かってフロートチャンバーの合わせ面を基準線にし、目盛りをあてて数値を読み取ります。


 

 

 

油面の見方は基準線・合わせ面へと上目盛りをあてて確認する方法と、下目盛りを液面に合わせて合わせ面からの距離を確認する2通りの方法があります。これはどちらで見ても同じ事ですので見やすい方で構いません。

 

マニュアルでの解説は上目盛りを基準線にあてて測定しているのが分かります。

フロートレベルの測定 ~フロートの調整①

マニュアルでの標準値は「2.5~4.5mm」

標準値の中心を目掛けて調整すると「3.0~3.5mm」に合わせたい所です。

可能であればフロート高さの調整で油面を規定値に合わせる事が出来るのが理想的。
この部分で数値が分かると作業し易い事は明白です。

 


【フロートの左右高さを合わせる】

よく見ると左右での高さや角度が合っていない物があります。
フロートの調整をする前段階で、まず最初の作業として左右の高さを合わせます。これはベースプレートを軽く曲げての調整とします。
フロート高さだけでなく、角度・上面の水平もきっちりと合わせます。


【フロート組付けの注意点】

画像左側でドライバーで指している向きが正解。  画像右側は「×」 逆さまです。

キャブレターを逆さまにした状態で見て、ベースプレートに突起のある方が上向きになるのが正解です。数は少ないですが組み間違いで不調を訴えてくる依頼もありましたので要確認。

 

フロートの上下を間違えるとこれだけの差が発生してしまいます。こうなるとエンジンはかからない程の油面の低さです。
(左が正常位置で右は裏返しでの組み込み図)


【フロートピンについて】

 

未だに新品で購入可能ですが、現在フロートピンは他車種用へと番号変更されています。
その為形状も変わりピン穴へキツく組み込まれるタイプになっています。

 

傘側径が若干太く設定されており、これによってキャブレター本体側には軽く叩いて挿入しないとなりません。

 

 

経年劣化で弱っているキャブボディです。ダメージを与えない為にもベルトサンダーにてピン側を削って、新車時同様に軽い力で挿入出来る様に加工します。
(画像は加工されスムーズに取り付け可能な状態)


フロートレベルの測定 ~フロートの調整②

フロート単体での調整が済んだら油面調整に移ります

フロート左右での水平合わせ・高さ調整が終わったら、いよいよ本題の油面調整となります。

前述したキャブレター・油面「2.5~4.5mm」の中心「3.0m」に合わせる場合、フロート側でのフロート高さはどれ位になるのかを検証しています。

まず1箇所(測定し易い1番若しくは4番で)測定し、その数値を基にしてフロート調整用の「爪」を曲げて油面を調整。そのフロート高さを基準に他3箇所を同じ高さに合わせます。

爪を引き上げると油面は高く、反対に爪を押し下げると油面は下がります。

細いマイナスドライバーを使って慎重に上下させて調整します。

サンプル車両のフロートレベル測定値は最小規定値を超えた「2.0mm」
この状態でのフロート高さは「24.0mm」
単純計算でフロート高さを1mm調整すれば目標のレベル「3.0mm」になります。
規定値の中心部分に近づける為少し幅を持たせるように「25.2mm」として
この数値で4気筒共に合わせて油面を測ると「3.5mm」で揃う様になりました。

 

   【フロート調整の実測値】

検証によって規定値の「2.5~4.5mm」に合わせる場合のフロート高さは

『25.0mm』

この数値が最も良い事が確認されました。

この検証値は工具をお持ちでない方への数値案内です。
しっかりとした調整・整備には、フロート調整・爪での調整後に純正工具を取り付けて4気筒の確認をします。

 

古いマニュアルからこんな懐かしい物が出てきました。
Z1に乗り始めた頃の整備メモです。
メモを見るとこの当時は「28.0mm」に合わせていた様子です。
計算すると1.5mm程規定値より外れていますね(かなり低い油面です)。

 


フロートレベルの調整 ~注意すべきこと

作業は手順を追って丁寧に行う

細かい部分の調整に始まり、同様の作業を幾度となく繰り返さないと辿り着かないのが調整作業です。面倒と思わず楽しめると効率良くはかどる事でしょう。

一番の注意点は交換部品は必ず純正部品を使う事。
もう廃番と思い込まずしっかりと調べてから部品を揃えます。今回のフロートバルブは特に重要部品です。社外品はオーバーフローの原因となりますので、要交換の場合は必ずカワサキ純正部品を使って下さい。細かい仕様と部品番号はコチラで解説しています。