ZXR,ZZR,ZRX,ゼファー,バリオス ~カワサキ系ヘッドライトの不具合

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カワサキ系 ヘッドライトの不点灯を検証
ヘッドライトが点かない~ZXR,ZZR,ZRX,ゼファー,バリオスに共通の不具合

エンジンがかからないとヘッドライトが点灯しないシステムの障害

モーターを回す方に電力を使う為、始動時は節電にライトを消し始動後に点灯させるこの機構。
ホンダはハンドルスイッチで、カワサキは「レギュレター」で制御しています。
ホンダ車両の場合でのライト不点灯原因の多くは右側のハンドルスイッチの接点不良や消耗によるものでした。

 

カワサキ車両のスイッチボックス内を確認するとスタートボタンのオン・オフとキルスイッチのみのシンプルな構造になっています。


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ZX9Rをサンプルに整備解説

配線図を見ても記載のない部分

充電関係とライト関係は配線図をみても全く関係ありませんので、その制御方法・回路を知らないと修理方法が全く分からない事になります

レギュレタートラブルの場合はヘッドライトのみが不点灯でテールランプは点いているのが特徴です。エンジンをかけてもライトが点かない時、充電系統まで点検はしないはずですので、とても困惑する修理依頼となります。

もし尾灯も不点灯の場合はライト電源に不具合があり、レギュレターではなくメインスイッチなどの方に問題があるはずですので見極めが大事です

ライトが点かない症状が発生した時はまずテスターでバッテリーの点検から

この症状が出た時は最初にバッテリー電圧の確認から始めます。

エンジンはかかっていてもライトが消灯している状態です。
この時バッテリーはアイドリングの状態で「12.2V」しかありません。


 

 

エンジン回転数を4000回転まで上げた時の数値でさえ「13.0V」です。

この様にライト不点灯に加えて電圧が上がらない症状がある場合はレギュレターの不良を疑う事になります

当然ライトが点いている場合の電圧も調べて比べて見たいと思うのですが「ライトが点かない修理なんだから直す前に出来る訳ないでしょ?」とツッコミが入る所です。
運よく点灯すれば良いのですが何度エンジンのオンオフを繰り返しても付かない場合は以下の方法をお試し下さい。

エンジンがかかっている状態でスタートボタン(セルボタン)を幾度か押す

押し続けるのではなく瞬間的に押す事を続ける意味です。
大体はこの作業で点灯させる事が出来る筈です。メカニズムまでは分かりませんが修理の際にたまたま見つけた方法です。

ライトが点いている時は正常作動する様子で同じ4000回転で「14.2V」まで上昇、アイドリングでも13V以上あります。

既に旧車の域に達しているZX9Rですので発電機・ジェネレターの点検も行いましたが発電量は正常値でしたのでこれをもって原因はレギュレターと決定づけられました。

レギュレター内には過剰電力をアースへと逃がす回路があります。ライトを点灯させる為のリレーはアッパーカウルステーに2つ固定されています。

なぜこの様な事になるのかと言うとレギュレター内に何らかの不具合が生じると、発電された電気がアースへ流れてしまってライト側へ電気が流れなくなります(とても簡単にかいつまんで説明)。
電気の性質として抵抗の少ない方へと流れる特性があるので、アースとリレーの分岐点では抵抗の少ないアース側を選んで流れていきます。こうして電気はリレー側へは流れず、ライトリレーに電力が供給されなくなりライトが点かないと言う事になります。


レギュレターの加工取付け

ZX9R用純正レギュレターは現在納期未定です

カワサキの場合納期未定から販売中止になる事もありますので、その対処方法として同じカワサキ純正部品を使っての加工取付方法を解説します。

カワサキ車両は大きく分けて2種類のレギュレターから成り立っていますので、配線の色・本数からこの2種から選択する事になります。
ZX9Rには配線の本数は違えど配色が同じゼファー400用を使います。

  【ゼファー400用と9R用レギュレターの違い】

右がZX9R用
左がゼファー400用・純正新品です。
取り付けピッチはゼファー用が55mm
ZX9R用は80mm。
その他厚みが違い、ゼファー用は25mm
ZX9R用が28mmです。

 


 

 

【ゼファー400レギュレター・部品番号】
21066-1098: 税込12760円

【ZX9Rレギュレター・部品番号】
C型:21066-1109
(税込み 15840円)

E型:21066-1119
(税込み 15840円)


 

 

配線はゼファーが6本、ZX9Rが8本ですが端子の数は同じ6本。
黒/黄と白線が各々2本あり、これが2→1と束ねられて8本線が6本端子になっています。
ジェネレター用・黄色線3本なのはほぼ全車種同じです。白、黒/黄、茶と合わせて計6本です。

カプラーの移設に加えて特殊な端子のすげ替えも同時に行います。
レギュレター~カプラー間で線を切って挿げ替えるのも簡単で良いのですが、すっきり綺麗に専用品の如く仕上げる為に手間はかかりますが端子の交換も行います(それと同時に配線も100パーセント新しくなるメリットもあります)。

  【端子の違いと外し方】

まず端子をカプラーから外します

 

配線の位置が分からなくならない様にカプラーに配色の印を付けておきます。
それと一緒に写真を撮っておくのと簡単に絵をかいてメモしておく事も大事です。

 

ゼファー400用
画像の様に細いマイナスドライバーで端子側の「爪」を押し込んで潰し、平らな状態にするとカプラーより抜き出す事が出来ます。


 

 

ZX9R用
少し特殊な端子でカプラー側の「爪」を起こしてロックが解除される仕組みになっています。
これも細いマイナスドライバーを使って手早く外します。上手くいかず何度も上げ下げしてしまうと爪が歪んでしまい、取り付けの時にロックが掛からず端子が抜けてくる事になります。


 

 

 

黒/黄と白線は一回り大きな端子で、その他は通常の大きさの端子構成になっています。

 


 

 

 

左がゼファー用の端子で右がZX9R用の特殊端子です。
四角い穴部分にカプラー側のロックが掛かる仕組みになっています。

  【端子の入れ換え方法】

よく見ると端子は前後2箇所でカシメられているのが分かります

端子側カシメはとても小さく開放は困難ですので配線側・大きい方のカシメを開放してそこで線を切り取ります。


 

 

まず被覆を剥いた線を開放したカシメ部分で固定。
銅線部を広げて平らに均してハンダ付けします。

こうして6本の線を修正してカプラーに挿入して完成となります。


 

 

カプラーの変色・劣化を除けばZX9R純正品と同じ仕上がりです。

端子のハンダ付けによって耐腐食性能と電気の導通性も向上しています。

 


加工の終わったレギュレターを車体に取り付け

レギュレターが完成しても取り付け部が違うのでこれも加工修正

  【取り付けステーの製作】

取り付けピッチがゼファー用は「55mm」でZX9R用は「80mm」。
このままでは車体には取り付け不可能ですのでステーを介して車体へ固定します。

こんな手頃なステーがありましたのでこれをベースに加工します。これはスズキの古い車両用・レギュレターのステーをとっておいた物。
同じ形でなくても穴の開いた市販品で十分対応可能です。


 

 

取り付けイメージはこんな感じです。

レギュレターのステーへの固定はボルト・ナットでは隙間が無く工具が入りませんので、ステー裏へナットを溶接します。

レギュレターを外側に出し過ぎるとカウルに干渉してしまいますのでなるべく飛び出さない様に取り付けます。


 

 

 

ステー固定用ボルトの厚み分レギュレターを外に出す為、5mmのカラーを取付ボルトに入れてオフセットします。


 

 

穴開け後ナットを溶接して完成した取り付けステーです。

ナット溶接はボルトで固定した状態で行うと位置決めが容易です。

溶接棒もステンレス用を使うと軟鋼用と比べ錆の発生が少ないのでお勧めです。

 


  【車体への取り付け】

 

フレームには溶接による盛り上がりがありますのでこれを避ける為に数ミリ厚のカラーを入れてステーを逃がします。これは平ワッシャーを何枚か使った調整でも大丈夫です。

 

ステー製作の注意点はZX9R用レギュレターの中心とゼファー400用レギュレターの中心を合わせる事。

ゼファー400用は一回り小さいサイズですのでステーを介して外側に飛び出した状態でもカウルへの干渉はありません。ですが上下左右の位置がずれると干渉し易くなりますので要注意。


新しくなったレギュレターの効果

  新品に交換後は電力供給増大・安定化

 

ヘッドライトが明るくなり、エンジン回転の上下での不安定さが無くなりました。


 

 

アイドリング時で「14.7V」、4000回転まで回転を上げた状態で「15.0V」。
交換前と比べて遥かに良好な値になりました。