W1-W3 ~フロントチェーンケース~エンジンスプロケットの整備要領

W3
W1-W3 ~スプロケット周辺整備

 

W1-W3 エンジンスプロケット交換に伴う周辺整備について

ここではフロントスプロケット交換に含まれる整備要項を解説しています。
細かい注意点なども記載がありますので参考にして下さい。


 

エンジンスプロケットの取り付け~固定用ロックナットの向き

スプロケットを取り付ける時に使用される特殊ナットの向きについて

画像で分かる様にロックナットはテーパーになっている面と平らな面で構成されています。
他メーカー・他車種にもこの形状のナットはクラッチセンター固定用等で使われていますが、どれも同様に「テーパー側がエンジン側(内向き)」になります。

平らな面が外向きになる様に組み込みます。
分り易い様にピストンリングの様に刻印がありますので、こちら面を外向きにして取り付けます。

 


 

エンジンスプロケットの取り付け~ロックナットの固定方法

スプロケットの固定方法は「手締め」でOK

スプロケット・ロックナットは手で締めるだけでも問題ありません。
ロックワッシャーにて緩み止めを行いますのでこれで大丈夫なのです。

ステムベアリング・ナットを締め込むこんな工具をお持ちでしたら、スプロケットを手で押さえて工具で軽く回せば十分です。
ナットの凹みとロックワッシャー側の凸部分を合わせて締め込み完了です。


 

ロックワッシャーの固定方法は、まずマイナスドライバー(小)を使って起こし上げます。

ナットとワッシャーの合口は以外にピッタリしていて隙間がありませんので、最初にナットとワッシャーの位置を上手に合わせておく事が大事です。


 

ピンポンチ(中)、またはプライヤーレンチを使って最後まで曲げ切って作業終了です。

ピンポンチを使う場合は小さめのハンマーで叩いてワッシャーを潰します。

 

ここで使用した「プライヤーレンチ」ですが、180mmサイズが1本あると非常に便利です。
車載工具にもあるとこの1本で様々な所で活躍しますし、幾つもスパナを持たずに済むのでとても重宝・便利です。

150mmですと力が入り辛い場面もありますが用途に合わせて選べます

 


 

フロントチェーンケース側の整備について

フロントスプロケットの交換は外す部品と洗浄する部分が多いので、余程思い切らないと自分での分解には至らない箇所でもあります。
ですのでエンジンスプロケットとクラッチ板、各種シール類を全て同時に交換とするのが一番の理想です。


 

各部の要点をここで解説していきます

クラッチハブ

クラッチハブ奥の「スラストワッシャー」。
ここはモリブデングリスを塗って組み込みます。いずれオイルに溶けてしまいますが、ある程度の効果は残りますのでしっかりと塗布。


 

 

クラッチ・ハウジングプレートに摩耗による段付きが出てしまっているのも最近多く見かけますので、ここもしっかりとモリブデングリスを塗布します(クラッチ・プッシャー側に塗っても大丈夫です)。

分解時、プッシャー奥から1/4ボールが落ちて無くなってしまう事もありますので、プッシャーを抜いた時に硬いモリブデングリスを押し込んでおくのもひとつの手法です。

 

 


 

シールプレート

オイルシールを交換時、ここは良く脱脂してからニトリルゴム系の接着剤で固定します。
(ニトリルゴム系接着剤とはハンドルグリップの固定に使う物です)
あまりたっぷりと付けずとも大丈夫ですので、画像の様に少量塗布にします。
オイルシールの表裏を間違えない様に気を付けます。
右側の拡大画像が正解で、スプリングのあるシール番号の無い方が車体左側に向きます。ここで言う車体左側とはクラッチハブ側になります。

 

手でも押し込めますが水平を大事にする為に(オイル漏れの原因になります)、プレスを使って挿入しています。


 

シールリングはシリコングリスを塗って組付けます。プライマリーチェーン調整時にミッションケースを動かしますが、その時にここがスライドするのでその動きがスムーズに行える様にする為です。


 

シールプレートのワッシャー部分。
ここがしっかりと嵌っておらず、ワッシャー類が潰されている車両が多いです。
ショップ対応でそうなっている車両も随分と見て来ましたのでここで取り付け解説をしていきます。
固定用ボルトは段付きになっていますので、ネジが無く太くなった部分をきちんとロックワッシャーと丸ワッシャーの穴に通します

まずは軽くネジを締め込み、ボルト側へとワッシャー2種を引き出します。
この時点でボルト側に出てこない場合はボルトの段差にワッシャーが引っかかっていますので、穴を探りながらワッシャーを動かしてみます。
(この後の作業までは、なるべく左右均等に行う様にします)

 


 

 

この状態でボルトを回してプレートに当たる直前まで締め込んでいきます。


 

 

最後にプレートの長穴へ導く様にプレート側をボルトの方に当てる要領でネジを締め込みます。
プレートを軽く回転させる動きでネジの無い部分が底まで到達した事を確認したら本締めして完了です。

ロックワッシャーの爪を織り込んで完成となります。
この部分がしっかりと出来ていないと、プライマリーチェーンの調整でミッションを動かす際に、本来フリーである筈のプレートが固定されてしまいミッションの移動がスムーズに行えなくなります。

 

 


 

クラッチスプリングボルト

ここはとてもバネの張力が大きいので苦労する部分のひとつです。
12mmソケットレンチに同じ12mmサイズのナットを入れてから押し込むと、スプリングボルトが丁度良い位置で固定されるので工具を使っての取り付けが可能となり作業性向上となります。


 

フロントチェーンケース

取り外したドライブチェーンケースを見るとエンジン側には擦り傷があります。
これはスイングアームに取り付けられている為、サスペンションの上下動でフロントチェーンケースと干渉してどうしてもここに擦り傷が付いてしまいます。
再メッキなどした車両などやはり傷はなるべく付けたくないものです。
解消法としては取付穴を少し拡大してドライブチェーンケースが少し下がった位置になる様に加工する方法。もうひとつはフロントチェーンケースを取り付ける際に、僅かに上下に「遊び」があるのでケースを上に引き上げながらの固定でプライマリーチェーンケース自体を限りなく上にしてドライブチェーンケースとのクリアランスを確保しようという方法。
穴の拡大無しでこの上向き取り付けで干渉しなくなった車両も多いので参考にして下さい。
ただしこれはエンジンスプロケット交換時の様な時でないと行えませんので、そんな時に思い出してみて下さい。


 

 

左画像が下寄せ。右側画像が上寄せです。
これだけの差があるのでうまく調整するとクリアランスが保てますので、擦り傷だけでなくこの部分からの異音発生も無くなります。

この様に上へと抑えながら各部・M8ボルトを固定していきます。

 

 

多用する場合にはニトリルゴム系の接着剤は「コニシG103」がお勧めです