マスターシリンダーをラジアルタイプにするのは今では定番の改造方法です。旧車カスタムが流行り始めた90年代初頭は部品も高価(ブレンボラジアル・ブレーキマスターで15万円程)でしたので交換する人が少なかった事や、インターネットも初動時代と言う事もあり情報は一般的には普及していませんでした(レース系ショップでは通説)。
純正のピストンサイズに合わせる
今回も例にもれず「ブレンボ」を使います。皆が付けているから敢えて違うメーカー品に・・・。とすると必ず後悔しますのでここは定番ではありますがブレンボをお勧めします。他メーカー品の報告をしますと、交換しても殆ど軽くならない、クラッチが切れない(ピストンが押し切れていない)、リペアパーツが無い・入手困難、フルードが漏れれ気味、等この様な事が多く最終的に全てに於いて高性能なブレンボを推しています。
特に引きが軽くなるのはこのブレンボの代表的な特徴であり、一度それに触れてしまうとあまりの軽さに少々高くてもここにお金をつぎ込みたくなります。
ZRX1100はZZR1100やGPZ900Rと同じピストンサイズで、Fブレーキ:5/8、クラッチマスター:14mmです。 以前のブレンボではピストン径は「16mm」と「19mm」の2種類でしたから16mmの選択肢しかありませんでした。現在は「17mm」が登場しましたのでお好み2種となりました。
ねぇねぇ~、16と17でどう違うの~?
きっとそんなにかわらないわよ~~~
~~~いえいえ全く変わります、たった「1mm」ですが大きく違います
【16mm】・・・引きが一番軽いですが反面クラッチの切れが悪くなります。引きシロも広く切れが悪いので使い難さが出てしまう事もあります。すべての車両で発生する訳ではありませんが、対策として、同時にクラッチディスクとプレートの両方とクラッチスプリングを新しくする事を推奨します。
【17mm】・・・切れ良し・使い勝手良しで引きの軽さは16mmに譲りますが、引きシロも純正と変わらず繋がりの伝わり具合も良好です。軽さの度合いは、16mm>17mm>19mm>純正、と言ったところでしょうか。
取り付け作業に於いての追加工
どんな部品を取り付けるにしても加工などの修正が必要になってきますが、今回もそれに倣ってひと手間以上に追加加工がありました。
結論から言いますと、ハンドルスイッチのチョークワイヤーの出口とマスターシリンダーのバンジョーボルトがガッチリと干渉します。ハンドル側チョークを移設する方法もありますが、レバーとワイヤーを新たに用意して更にレバー位置を模索というのも面倒なので、今回はハンドルにスイッチBOXの回り止め穴を追加してやり、スイッチをやや下向きにしてボルトを避ける方法をとりました。
実際の取り付け作業
如何なる時でもそうですが「仮組み」は重要です。そうする事によって今回の様に干渉する事が分かったりその対処法迄が見えてきます。
【チョークワイヤーの加工】
ボルトを避ける為に画像の標準位置よりもう少し角度を付けてあげます。
「ヒートガン」を使って軟らかくして好みの角度まで曲げたら・・・。
パーツクリーナーで瞬時に冷却。これでその角度で固定されます。
こうする事によって上手くボルトを避けて収まりました。
***2020年9月より「チョークワイヤー移設キット(仮称)」が発売されました***
これによってバンジョーボルトとワイヤー取り出し部分の干渉が解消され、ハンドルスイッチとクラッチレバーの位置関係も自然な取り付けになりました。是非ご覧下さい。
取り付け方法はコチラから
ホース両端部・各部のフィッティングを選ぶ
最適な角度・長さ、そして干渉度合いの少ない部品を選びます。
~~~バンジョーボルト含め全てのブレーキパーツは「ステンレス」で統一しています。黒いものが混ざっていますがワンポイントに色付きのステンレスを使った仕様です。
クラッチポンプのカバーの加工が必要
内側に付いた「リブ」が邪魔をしてフィッティングに当たってしまいます。ここを削って隙間を作りフィッティングの自由度を上げます。
色々と検証してみましたが、前述のフィッティング+カバー内側加工の組み合わせが一番違和感なくセッティング出来ましたのでそれを解説していきます。
ポンプカバーは内側の「リブ」が干渉しますのでその部分を削ってあげます。
使い古しでサンダーの「刃」が減り外径が小さくなったものを上手く使うとカバー内壁との間隔が大きく取れて削り加工がし易いです。
使う部位によって使い分け出来る様に使い古した数種類の大きさの刃を揃えてあります。
サンダーで削ったところです。削り具合はこの程度で大丈夫です。
見える所ではありませんが気分的な物で綺麗に仕上げないとならない性分ですので、エアリューターにて仕上げます。
ペーパードラムを使うとここまで綺麗に表面はなだらかに仕上げることが出来ます。
~~~これでポンプ側セットアップの完了です。
メッシュホースの作り方
参考としてここでメッシュホースの作り方を解説していきます。 これが出来ますと汎用品を使わずに自分で好きな長さ・取り回し、そして気に入った形状・素材・色のフィッティングを使って自分好みに仕上げることが出来ます。
ガムテープを貼って(メッシュが広がらない様にする為)その上からサンダーで切るか、専用の金属用ハサミを使って切断します(画像ではハサミを使っています)。
ホースが被覆でコーティングされている場合は画像の様に「5mm」程被覆を切り取ります。
フィッティングパーツを分解しナット側をホースに通します。
被覆を切った周辺をラジオペンチなどで軽く潰すと画像の様に綺麗にメッシュが開きます。
これでオリーブの取り付けがスムーズに行えます。
オリーブ(金色の部品)を中心のテフロンチューブとメッシュの隙間に挿入します。
ナット部を万力で挟んで、上からオリーブをハンマーで叩いても良いのですが、私はいつもこの様にラバーマットに押し付けてオリーブの接合面に気を遣いながら組み付けています。
オリーブがテフロンチューブに底付きするまで押し込めたらナット部品を開口部がスライドするプライヤー「プライヤーレンチ」で挟んで引き出します。その後ボルト部品(フィッティング先端部品)を締め込んで固定したらホースの完成です。
ここ見てる人は自分でやりたいってひとも多いと思うんだけど・・・。
そうよね~、だからときどきでてくる「ワンポイントアドバイス」は楽しみなのよね~♪
クラッチスイッチkitの取り付け
ギヤが入っている状態でクラッチレバーを握ってスターターが回る様にする為のスイッチです。ブレンボマスターには当然の事ながら付いていませんので、販売されている部品の中から良い物を選んで取り付ける事にします。
今回使ったのは「光研電化」製のスイッチキットです。価格設定は高めですがブレンボの日本法人で株式会社ブレンボ・ジャパンの二輪正規代理店である事から信頼性が高い商品です。この時点で定価は「3800円(税抜き)」ですが、今後倍の価格にまで上がると言う事です(2019年4月現在)。
赤・緑・黒の3色の配線はカプラーに対してこの順序で接続します。
スイッチは防水なのでカプラー部分の処理だけで問題なく取り付けられます。 仮に同形状のカプラーが見つからなくともキットにはギボシ端子が含まれていますのでそれを使う事で解決します。
ホースの取り回し
純正ではゴムホースの途中が「パイプ」になっていますので固定方法がしっかりとされています。全てがホースに変更されますので熱対策を考えるともとの通りではエンジンに近く、熱を受けてしまうとブレーキで言う「フェード」を起こしそうですのでこれは避けたいもの。
ですのでキャブレターとエアクリーナーボックスの間、1番と2番ダクトの隙間からフレーム上方へと取り回しを変更しました。
周辺パーツのフィッティング
マスターシリンダーを交換するにあたってリザーブタンクを用意したりそのステーの準備が有ったりと、周辺パーツだけでも前述のクラッチスイッチを筆頭にして数点出てきます。
最近流行りの「スモークカラー」のリザーブタンク。カワサキ純正部品でもデイトナ製品でもありますが、今回はブレンボ純正のスモークタンクを使ってみました。先の2社と比較して艶は劣りますが(カワサキ純正とデイトナはスモークでも透過率が高く艶が良い)、同じメーカーで揃えてみました。ステーはヨシムラコンプリート車両でも採用されていたウッドストック製の60mm・黒を使っています。これは自在に角度が変えられますので良心的価格と合わせて毎回重宝しています。
~~~ブレーキフルードも車体色・カワサキカラーに合わせてプロト販売の色付きタイプ・グリーンで更に雰囲気を高めてみました。
このフルードは容器が秀逸で先端部がノズルになっていますので、リザーブタンクに注入し易く空になっても他メーカー品を入れて使いたいと本気で思う程使い易いです(内容量210mlの方)。
- ブレンボ・クラッチマスターシリンダー:(RCS Φ17mm-18/20mm) ~~~39000円
- ミラーホルダー: ポッシュ RCS用/ブラック ~~~2000円
- カラー : ポッシュ ステー共締め用 ~~~200円
- リザーブタンク: ブレンボ S15B スモークタイプ ~~~2200円
- マスタータンクステー : ウッドストック 60mm/黒 ~~~1800円
- ポンプ側フィッティング:アクティブ・グッドリッジ フォージ・45度 ~~~5900円
- ポンプ側フィッティング:グッドリッジ バンジョーアダプター・サイド20度~~~2300円
- マスター側フィッティング:グッドリッジ フォージ・ストレート ~~~2600円
- マスター側フィッティング:グッドリッジ バンジョーアダプター・20度 ~~~1600円
- マスター側バンジョーボルト:グッドリッジ ・シングル(P-1.00) ~~~800円(黒900円)
- ポンプ側バンジョーボルト:グッドリッジ・シングル(P-1.25) ~~~800円(黒900円)
- アクティブ・ブレーキフルードBF4グリーン(210ml1) ~~~1000円
価格は全て税別/2019年4月現在のものです
クラッチを更に軽くする為の作業
これをしたからと言って万人が体感出来る事ではありませんが、このような細かい作業の積み重ねが軽さを生むのだと思います。 是非細かい所まで追求して各部の動きを良くして更なる軽さを実感して下さい。
押し付けている指を離すと・・・、「すっ」と言うよりも「パッ」と飛び出します。
~~~なぜこんなにもスムーズにスライドするのか?
これは究極の無抵抗潤滑剤の為せる業です。 「ベルハンマー」と言う商品名で近年ネット上でも各方面で話題になっている製品です。これをピストンシールにスプレーしてあげるだけでこのスムーズな動きに変わります。高価な商品ですがワイヤークラッチの内部に注入するとそれだけでクラッチは軽くなる程です。ブレーキピストンの他フロントフォークシールにも塗布すると初期の作動性が向上します。