Zシリーズ・Wシリーズ、長期間乗らない場合の車両保管方法 ~~~冬に向けた準備
乗り足が遠のく寒い季節など、車両を傷ませずに保管するにはどうすれば良いのでしょうか~?
乗らない期間に傷みやすい部分は?
使わないでいると不具合の発生する部分を挙げてみると・・・。
- バッテリー
- キャブレター(燃料タンクとコック含む)
- 各種オイルシール類(サスペンション含む)
- 各種ワイヤー
- タイヤ
- ドライブチェーン
- ポイント(接点部分)
- 各部オイル
- レギュレター
- ブレーキ(ディスクブレーキ・キャリパー)
- クラッチ
悪くなる部分の解説と対処方法
- バッテリー
全てのオートバイで悪くなる所「NO.1」です。
保管時にマイナス端子を外しておくと昔から言われます。イモビライザー等セキュリティ関連が付いていない古い車両ではあまり効果はありませんが、外さないよりは外しておいた方が良いのは間違いありません。理想はやはり「トリクル充電」ですが、屋外保管の車両では無理があります。
こまめなメンテナンス(充電)にて対処。
- キャブレター
傷んだ燃料が固形化するとフロートまでもが腐食してしまいます。2年も放置するとフューエルコックとタンク内部に残ったガソリンも固形化しますので注意。フューエルタンクに至ってはコーティングされていても腐食したガソリンがコーティング被膜を侵すので、より酷い状況になる事も考えておかないとなりません。
フューエルコックをオフにした後フロートチャンバーを外して燃料を抜き、空キックで燃料通路に残ったガソリンを排出して対処。
- 各種オイルシール類
フロントフォークやリヤサスペンションのオイルシールが硬くなりオイル漏れの原因に(数年置くとインナーに錆も発生)。フロントチェーンカバー内のOリングとオイルシールが硬化してオイル漏れが発生。
サスペンションに関しては潤滑剤を塗布しての対処が可能。 -
各種ワイヤー
湿気によりインナーケーブルとアウター間の汚れが硬化し摺動抵抗が大きくなって作動が重くなる症状が発生。長期間動かさない事によって錆・腐食が発生し、ゆくゆくはワイヤー切れの原因となる事も。
防錆効果の高い潤滑剤を注入して対処。
- タイヤ
空気圧低下によるタイヤ表面のひび割れ・オゾンクラックの発生。ホイール内部に溜まった水分による内部腐食。
こまめなエアチェックと接地面の変換、メインスタンドでの車両保管で対処。
- ドライブチェーン
同じ位置で固定されることによりスプロケット部分に巻き癖が付き動きが悪くなる。グリスが固着しリンクのシールにもダメージ。最悪の場合Oリングが千切れてしまう事も。
こまめな注油とホイールを回転させる事によるチェーンの位置変更で対処。
- ポイント
接点部分が錆び再始動時に火花が飛ばない症状が発生。
ポイントでスパークしていない場合は紙ヤスリで接点を磨く作業が必要。 -
各部オイル
例え新品でも半年もすると酸化が始まりオイル本来の性能も損なわれていきます。
再始動の際にはエンジン・ミッション・クラッチ全てのオイルは交換します。
- レギュレター
従来型の「チリル式」の物は長期間動かさず無通電の状態が長く続くと、内部機構の動きが悪くなりショートしてしまう事もあります。数年振りに動かした車両(レギュレター部)から煙が上がった事も1台や2台ではありません。
対処方法は無く、こまめなエンジン始動(電流・電圧の上昇と下降)が必要となります。
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ブレーキ
ドラム式は不動の期間が長期になると錆で腐食したライニング・ベースから消耗部が剥がれ落ちる場合もあります。この状態はブレーキパネルを分解しないと確認出来ない物ですので、再始動の際にはホイールの分解点検を行う事を推奨します。
現在では社外部品としてブレーキシューは販売されていますのでこれで対応可能です。
ディスク式のブレーキ・キャリパーはスライド部分のグリスが硬化して作動不良を起こす物も多いです。ブレーキピストンシールが劣化して硬くなるとピストンの戻りも悪くなります。そうしますとブレーキの引き摺りが発生、車検不合格の対象にもなります。
対処方法としてピストンを押し出して防錆潤滑剤を塗布、その後ピストンをキャリパー内部まで押し込んだ状態で保管。
ピストンが押し込めない時はブリーダーを開放してフルードを抜くと良いでしょう(再始動の際にはフルードの追加を忘れずに)。
- クラッチ
長期間使わないと常に押さえつけられているクラッチは「張り付き」を起こします。酷い場合はクラッチカバーを外さないとなりません。
クラッチ調整部分でプッシュロッドを押し込んだ状態で固定・クラッチが切れている状態を故意に作っての対処方法もあります。
張り付きにくいオイルに入れ換えておくのも一つの手段です。
ひと冬程度であればバッテリー取り外し・充電とキャブレター内部のガス抜き・フロートチャンバー取り外し。このふたつのメニューで対処出来ます。
しかし再始動の際には車体全体の整備は必要になる事と思います。
長期間の格納方法
長期格納には車体を労わる様々な準備が大切です
【格納の準備作業】
- 燃料コックからホースを外し「R(予備)」にしてタンク内のガソリンを抜き取る。
- フロートチャンバーを外しキャブレター内部のガソリンを空にする。
- スパークプラグを外し防錆剤入り潤滑剤をスプレーするかエンジンオイルを注入し、数回の空キックをしてシリンダー壁面の防錆をする(最後にプラグを装着)。
- 前後タイヤの下に防湿用の板かシートを敷き、空気圧を若干落とす(1.5kgf程度に合わせる)。
- バッテリーを取り外し、能力低下を防ぐ為に時々充電を行う。
- メッキ部分にも潤滑剤をスプレーして防錆に努める。
バッテリーの充電もそうですが、時々は前後のタイヤを回転させ同じ部分に荷重が掛かったままにしない様にします。メインスタンドを使うのが理想的です。
ドライブチェーンも同様に時々回転させて、同じ部分がスプロケットに巻き付いてクセが付かない様にします。