W1S,W1SA,W3 それぞれの個性
メンテナンスに関しては3車大きく異なる事はありませんが乗車に於いてはW1Sはいわゆる「逆チェンジ」。右足でのシフトチェンジ&左足のリヤブレーキ操作ですのでここは大きく変わってきます。細かい部分に目を向けるとウインカースイッチが右側にあってチェンジだけでなくこれも「逆」で、シフトパターンは踏んでいくとシフトアップなのでここも通常とは「逆」です。
W1S概要
【W1S】
- フロントフォークスプリングがインナー外
- ハンドルスイッチの配線はハンドル中通し
- シートはマットの下にスプリング
- ウインカースイッチが右側
- スピードメーターケーブルはミッションから取り出し
- 燃料タンクはクロームメッキ
- タンクキャップは回して開閉
- ポイントとイグニッションコイルは1個
- シフトチェンジが逆
- マフラーは2点吊り
- 音・乗り味共に3車の中で一番マイルド
- チョークはキャブポートを塞ぐタイプ
- フロントブレーキはドラム式・シングルリーディング
W1SA概要
【W1SA】
- フロントフォークのスプリングが外
- 燃料タンクキャップは鍵無し開閉タイプ
- シートはマットの下にスプリング
- ポイントとイグニッションコイルは2個
- バックミラーはハンドル固定
- 後期型はW3と同じくエキパイ連結+大根マフラー
- 乗ると車体のガタツキが多く、3車の中で一番古く感じる
- チョークはキャブポートを塞ぐタイプ
- フロントブレーキはドラム式・シングルリーディング
- シリンダーヘッドのフィンは6枚
650RS/W3概要
【W3】
- フロントフォークはZ2と同タイプの現代版
- 燃料タンクキャップは鍵付き
- ポイントとイグニッションコイルは2個
- シートはスポンジタイプになり現代と同じ造りに
- W1S,W1SAよりもシリンダーヘッドの「フィン」が1枚少ない5枚
- フレームのマフラーステー部分が改良され「コの字」から箱型・ボックスタイプに変更
- W1SA前期のエキパイとサイレンサーに交換すると3車の中で一番大きく太い音になる
- エキパイ連結・大根マフラー
- チョークシステムはガス供給タイプ
- フロントブレーキはダブルディスク
エンジンの始動方法
Wはキックオンリーのスタイル。ヤマハSRと同じですがデコンプはありません。ですが2気筒で排気量が二つに分けられますのでSRと比較して踏み下ろしは軽いです。
W1SとW1SAはチョークがポートを遮断するタイプでW3は別通路から新たに燃料を送る現行車と同様の仕様となっています。そのせいか初めてWを所有する人にはW3が始動性に於いては一番楽かもしれません。
W1S・W1SAの場合はハンドルに装備されたチョークレバーを使いますがここで間違えない様にしなければならない重要な事があります。それはレバーが手前に引かれている状態でチョークが使われていない状態と言う事。キャブレターにはポートを塞ぐ開閉弁が装備されており、レバーを引く事によってポートが開放・チョークオフになります。反対にレバーを戻すとワイヤーを介して開閉弁が下がりポートが遮断されチョークオンになる仕組みです。
W1S・W1SAの場合チョークを使ってもなかなかエンジンがかからない時も多いです。その場合は「ティクラー」と呼ばれる棒状のボタンを押す事によって生ガスがエンジンポートに流れエンジンが掛かり易くなると言う機構を使います。これは数秒間押し続けたり「カチャカチャ」と幾度かに分けて押したりと人によって使い方は様々ですが、勢いよく何度も押すのはいわゆる「油面」の狂いにもつながりますので数秒間ゆっくりと押すのが常識的な使い方です。あまり長く押していてもプラグのカブリにもなり逆にエンジンがかからなくなりますので要注意。通常2秒程押す行為を2~3度繰り返す程度でエンジンはかかると思います。これはその車両に合った時間と回数がありますので丁度良い所が見つかれば始動は容易に、季節ごとに探って慣れてしまえば一年を通してすぐにエンジンがかけられるようになる事でしょう。
ティクラーやチョークを使ってもなかなかかからない時、プラグがカブってしまっている可能性があります。燃焼室に溜まってしまった混合気を一掃しないとこの場合はエンジン始動は困難です。その際にはチョークを戻しアクセル全開固定のままキックを数回すると未燃ガスが一掃されます(W3ですとこのキックでエンジンがかかる事が多いです)。空キックの後チョークオフでキック、それでかからないのであればここでチョークオン。殆どはこれでエンジンはかかります。エンジンの状態にもよりますが圧縮値が適正であれば問題なくエンジンは始動します。
最初におさえておきたい整備箇所
旧車の場合殆どの販売店で現状販売に近い形態で納車される事が多くそれによってのトラブルも多く耳にします。購入時に覚悟するのも残念な事ですが、そこは購入前にしっかりと話し合いをして納得の上で買う様にしましょう。ここでは通常の「納車整備」ではまず行われない、でもすぐにトラブルが発生する部分を紹介します。ですのでここを最初に取り掛かる整備箇所として参考にして下さい。
ここからオイルが漏れてきますとクランクケースやプライマリーチェーンケースまでオイルが広がり、まるでそこらじゅうから漏れているのではないかと言う位にオイルが伸びていきますので要注意! 無関係な所まで疑ってしまいますのでまずは中心的なオイルパンのガスケットをオイル交換時期に合わせての交換をお勧めします。ガスケットは既に販売中止ですのでオイルパンを外して脱脂後、スタンプ用黒インクで市販のガスケットシートに転写して切り取っての製作をします。
この2穴パンチのホールサイズが6mmボルト穴にピッタリのサイズです。
パンチの裏蓋を外して位置を確認しながら穴を開けていきます。
最悪の場合外れてしまう事もあります。余程の内圧が掛からなければそうはなりませんが要注意箇所です。一旦外して古い液体ガスケットを綺麗に取り去り、よく脱脂してから再度液体ガスケットを塗って組付けます。
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緩みやすい場所あれこれ
~~~Wはあらゆる場所が緩みやすく、当時は部品を落としながら走るバイクとまで揶揄されていた程です。
W1SよりはW1SA、W1SAよりはW3と、モデルチェンジの度に緩み難くなってきてはいますがそれでも部品を落とす位に各部緩みます。
~~~以上が代表的な緩み箇所です。
その他エキゾーストパイプ・フランジナットも良く緩みます。走行中にナットが外れてフランジごと左エキゾーストパイプが抜けて歩道側に傾き、左側道路脇の縁石にぶつかりマフラー大破と言う事もありました。
これは稀な報告ですが、エンジンハンガーボルト、フロント側ダイナモを囲うように取り付けられている左右のマウントにあるボルトです。最近入庫した別件修理車両に於いてここの3本が脱落していました。組み上げる時に潤滑剤は使わずここはむしろ「ネジロック剤」を有効に使うのが良いと思われます。
「W」購入前の方から購入して間もない方へ最初に贈る記事です、どうぞ参考にして下さい。