Z1/Z2,650RS/W3 ~レストアへの拘りと「PRIDE」

W3
レストアへの拘りと情熱
Z&Wシリーズ レストアへの情熱 ~拘り、そして「PRIDE」

旧車再生への情熱はこの頁が全てではありません。
しかしその入り口の向こう側がここから垣間見える事でしょう・・・。

Z1/Z2とW3はレストアに関しては同じ範疇に入ります。
これからここで行う案内には題材として、Z1と650RS/W3の双方を交えて解説しています。

「輝かせる」事を大前提に行うコンクールコンディションの先を目指した内容です

当時のままのコンディションを保つ事も大切な事ですのでその維持作業も行っています。
ここではコンクールコンディション・珠玉の1台を作るにあたっての解説と、その状態維持を容易にする為の加工法を公開・解説しています。


メッキ
ペイント、「磨き」。この3つの作業がレストアの基本です。
メッキとペイントそして研磨前の処理が一番大事で、これらをしっかりと行う事によって仕上がりが大きく変わってきます。


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3つの基本を解説

  • クロームメッキ(再メッキ)
  • リペイント  (外装から細かい部分まで)
  • 研磨     (アルミカバー類のバフ仕上げ

再メッキ

ダイナモカバーを除き、ほぼ「クロームメッキ」での仕上げとしています。
ダイナモカバーは同じメッキ処理でも新車時・元の色に合わせて「有色クロメート」での処理です。



リペイント

フレームに始まりフューエルタンクなど外装から細かいカバー類まで、同じ黒でも艶有り・7分艶有り・5分艶まで使われる部位に合わせて様々に調整しています。
外装に於いてはフューエルタンクのラインの段差を無くす為にクリヤーを吹いた後に研磨をします。この作業を3~4回程繰り返してタンク表面を平滑にしています。塗装方法と塗色も新車当時に限りなく近いものでペイントしています。
仕上げのクリヤーは艶が良く、非常に表面硬度の高いメルセデス純正塗料でのフィニッシュです。



研磨

アルミカバーの他、ステンレス製の部品も全て研磨してバフ仕上げとしています。
アルミカバーは手作業での水研ぎ・耐水ペーパーを使い表面の凸凹と腐食部分を取り除き、作業前の状態で400番若しくは600番から始めます。更に800番・1000番・1200番・1500番そして2000番へと目を細かくしていき、その後コンパウンドにて仕上げた後にバフをかけて完成です。
(2000番まで手順を踏んで磨きますと、バフなしで最後のコンパウンドでとても良く輝きます)

手の入らない細かい部分はサンドブラストにて「ガラスビーズ」をあててほんのりとした輝きで補っています。リヤスプロケットハブの中心部分や、エンジンカバーのボルト部分。そしてホイールハブセンターはこの手法を使う事も多いです。
そんな細かい部分までの研磨依頼も数件ありましたが、その希望に沿う様にポート研磨の如くリューターを使って磨いた経験もあります。



M8以下のサイズはメッキをかけても綺麗に載らずかえって仕上がりが悪くなる傾向にあります(特にM6以下)。ですのでボルトもナットもワッシャーの殆どをステンレスに換えてバフ仕上げを施して組み付けています。下処理にベルトサンダーを使い1個1個手作業で段差を落としていきます。
部位によっては純正と同形状の「ドーム型」にボルトヘッドを加工します。
プレーンワッシャーはサイドと表面、スプリングワッシャーは側面プラス上下面の3箇所と泥濘なく全方向を仕上げています。六角ボルトは側面を含めた「7面」を処理します。


仕上げへの拘り

クロームメッキは付き合いの長い業者様に依頼しますが、最近はバイク業界への売り込みが始まり雑誌広告も増えました。その宣伝効果により納期が今まで以上に掛かるようになって早くても1ヶ月から1ヶ月半となりました。ですのでフルレストアの場合まず最初にメッキ前処理加工を行い、メッキ依頼が終わった段階でペイント前処理に取り掛かる様にしています。こうする事によって作業の効率化も図られ最短で3ヶ月~3ヶ月半での納期でレストアが完了します。
(ステンレス・バフ仕上げ仕様を除く)


【クロームメッキ】
再メッキ前の処理はベビーサンダーとペーパードラム、そしてベルトサンダーにて作業を行います。
縦のライン・各部「端面」を平らにする事で光り輝く面積が増え遠くからでも車体全体が眩しい位に光りますので、よくよく見ずとも全体像が違ってきますので並べるとすぐに判別出来るほどです。
前処理のコツはなるべく端面の角、「エッジ」を90度に立てる事。そして面は必ず平らにする事。
こうする事によってメッキ表面に映った景色と光の反射が綺麗に流れていくのです。

最も肝心な事は裏表を綺麗に仕上げる事
「W」に於いてはハンドルストッパー、・トルクロッド等、場所によっては上下・左右の裏表迄見えてしまう部分は両面共に綺麗に仕上げています。
ボルト・シャフトに関してはネジ山側の端面も平らに修正してメッキを載せて輝かせています。
こうする事によってナットと合わせて共に綺麗な輝きを発します。
メッキ加工専門とは言ってもバイクのレストアに従事はしていませんので構造までは把握出来ていません。そこでこちらからしっかりと1点1点分かり易くする為に指示書を作って依頼します。

☆ハンドルストッパーは両面仕上げています☆

☆トルクロッドも両面仕上げる事によって左右どちらから覗いた時にも輝きを放ちます☆


凹み・錆の腐食で虫食い状態の製品は「溶接」によって表面を盛り付け、サンダーやグラインダーで仕上げてからメッキ加工を施します。


~~~「溶盛り」後にサンダーとペーパードラムを駆使して表面を仕上げます。
地肌が悪い場合はメッキを2度3度と繰り返してその都度の研磨作業で表面が平滑になる様、見えない部分での処理を大事にしています。

***深い錆ですとメッキをした後ピンホールとなって浮いてくる場合もあります***

 


【ペイント】
フレーム・スイングアーム、溶接跡の段差をなるべく無くす様にペーパードラムにて研磨します。
端面のプレス抜き跡も綺麗に平らに修正します。
オーナーさんによっては細かい部分まで固形ワックスを使う事もありますので、こうする事によって段差への目詰まり解消にもなります

~~~これは下地処理中、Z1のスイングアームです。


 

 

~~~仕上がり具合が良く分かると思います。

フレームも同様にペーパードラムを使ってペイント後の輝きを考慮した下処理を行っています


【研磨】
M3/M4/M5/M6/M8、各サイズのボルト・丸ビス・ワッシャーの殆どをステンレスに交換し、
その全てをバフ仕上げとしています。

バフ仕上げの前処理に時間をかけ、完成後の輝きを考慮した仕上げを心掛けています。

六角ボルトもワッシャーもプレスで抜く為に、端面・側面には抜き跡が筋となって残っています。
ボルトトップにも成型痕がありますし、ワッシャー表面にも同じ様に成型時の筋が見られます。
それら全てをベルトサンダーで平らにしてからバフ仕上げを施します。そうする事によってまるで宝石の様に直線的な輝きとなります。

 【六角ボルト】~加工前

 【六角ボルト】~加工後


 【ワッシャー】~加工前

 【ワッシャー】~加工後


 

 

 

この様に小さいサイズのボルト類はメッキよりもステンレス研磨の方が肌理(キメ)細かく輝きます。

貫通型のボルト固定部分で究極を目指すと、ボルトは出っ張り過ぎずそして凹み過ぎない様に仮組した後に長さを決定します(長い物を削って調整しネジ部端面もバフ仕上げを施します)。
ボルトナットの部分も同様にナット上面と長さを合わせて研磨する事によって美しい断面が形成されるのです。

ここが私一番の「PRIDE」です

全ての部分で行うにはかなりの労力を使いますがこのレベルで組み上げると細部まで輝きます


拘りとプライド ~その一部を画像で公開

キチンと走る為の整備・修理を行った上での仕上げです。
メーターギヤが不良であれば新造して修理、ミッションギヤがおかしいのであれば単品製作・修理、エンジン内部品が欠品ならば製作・交換(バルブなど)と言った様に「基本性能」が発揮された状態が前提での「レストア」です。
エンジン内部からミッション・クラッチ、電気系統の全てが正常に機能するよう整備された最後の仕上げがこの「車体レストア」なのです。

【エンジン回り】

~~~鋳物合わせラインをヤスリで削って平らに修正後、ガラスビーズにて仕上げています。


 

~~~シリンダーはフィンの段差をペーパーで平らにし、鋳造跡も修正してリペイント。

【キャブレター】

 

キャブレターボディはサンドブラスト・ガラスビーズにて仕上げ。真鍮部品はコンパウンドにてバフ仕上げ、鉄部品はクロームメッキで真鍮のゴールドとのコントラスト・対比を図っています。

サイドのバンジョーボルトとロックプレートの丸ビスはステンレス製品を研磨してバフ仕様にしています。
アイドルスクリューのスプリングもクロームメッキにして細部まで輝かせています。

【メーター】 ~~~インジケーター・パネル

インジケーターパネルは分解して「緑・橙・青・赤」の4色部分を耐水ペーパーで水研ぎ。
歪んでいた面を平滑にし磨き込んでいます。スイッチを入れた瞬間から明るくなった事が確認出来る程の輝きです。

 

【スイッチボックス】


 

 

 

スイッチノブはクロームメッキ仕上げ。
「+」ビスはステンレスビスをバフ仕上げ。
配線固定用プレートはステンレス板での単品製作品でこれもバフ仕上げとしています。

【シート】

シートベースはブラスト処理後にリペイント。見えなくなってしまいますが、骨格・ベースは側面迄平滑にした後に塗装しています。
スプリングとフックは全てクロームメッキ。ベースのペイントとスプリングのメッキが出来上がった段階で張替えを実施します。


 

パイピングは純正と同じ仕様で金紐をクリヤーチューブでコーティングした物を使います。
シートモールはステンレスなのでこれは研磨後バフ仕上げにします。
後方の「KAWASAKI」ロゴも純正と同じ書体・同じ大きさで再現しています。

【ホイール周辺】

ステンレス・スポークはペーパーで下処理後、コンパウンドを経て青棒でバフ仕上げ。
ハブから覗くスポークヘッド部分は平らに修正後これもバフ仕上げとしています。


 

 

ニップルまでステンレスのスポークセットを使う場合は、当然ながらニップルもペーパー研磨後にバフ仕上げを行っています。
ひとつひとつ手作業ですが、ここはペーパーグラインダーを使い下処理の簡素化を図っています。

ペーパーグラインダーで研磨する際には押し当て易い様にスポークを「治具」として使います。

【電気部品】

~~~レジスターは分解してベースプレートをクロームメッキ。
取り付けビスとナット類はステンレスに換装、バフ仕上げにしています。


 

 

イグニッションコイルのホルダー・プレートは断面を平らに研磨した後、クロームメッキをかけています。取り付け用の「+」丸ビスはステンレス製でワッシャー共々バフ仕上げです。

 【バックミラー】

バックミラーはステンレス製なので、これも磨いて鏡面仕上げとします。
左が磨き前で右が仕上げ後。
仕上げ後は鏡面状態になっているのが分かると思います。


 

 

耐水ペーパーから始めてコンパウンドで中仕上げ。最終仕上げはハンドドリルで「青棒」を使ってバフ仕上げを行います。


ボルト・ナット部分は前後と上下のラインを合わせた位置で固定しています。
細かい部分ですがこうする事によって視覚的安定化を図っています。